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先日も札幌の定山渓と言う場所で、木象嵌の打ち合わせをしている時でした。

定山渓

森に囲まれた、とあるホテルの一角で話をしていたのですが、

「これ、何の木ですか?」

と聞かれて、一瞬シーン・・・・。

森

「わかりません・・・。生きている木はよくわからなくて・・・」とお答えすると、さらにその場は「・・・。」となりました。

木工をしているというイメージが、「木に詳しい」と理解され、「木を見たら何でもわかる」という風になるらしく、こんなシチュエーションはしょっちゅう体験します。

こんな時、声を大にして言いたいのですが、「製材された木なら、よく知ってます!」ということ。

家具作りをしていれば、否応なく製材された木を毎日のように目にします。

 

木材屋さんで、「これは何ですか?」と聞きながら、材料の性質、良し悪しも勉強していかなくてはなりません。

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木工をしていると、これは必ず通る道です。

材料の良し悪し、向き不向き、そして利点、欠点を知らなくては、とても家具なんて作れないからです。

でも、今そこに生えている木が何なのか、この質問は特に森の中にいるときなどは本当に難しくて、困ることもしばしばです。

もちろん、一般的なものは私も詳しくわかります。

白樺や、ドングリが生るミズナラ、コナラ、ポプラに、クルミの木、朴の木、センの木、松(2、3種類)なんかはすぐにお答えします。

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ナラの葉っぱと、

acorns-seeds-oak-brown-harvest-autumn-walnut-hat

ドングリです。

でも、木の色、葉っぱだけを見てわかる木はほんの一部です。

同じような葉の形をしていても、まったく別の種類の木だということも、とても多いからです。

せめて花が咲いていると、わかる木も増えるのですが、花は春先の一瞬でなくなってしまうので、初夏以降は難しくなります。

では、いったいどれくらい木の種類があるか、考えたことがありますか?

実は、世界中に生えている木の種類は、およそ10万種と言われています。

植物の派生、分布などによって、木なのか草なのか、という問題はありますが、それでもこの数字に近い種類があることは間違いありません。

日本の国内にはおよそ1500種類と言われています。

この中には、竹や竹の仲間も加わっています。

このうち、木材、として扱われる木の種類は、およそ100種類。

原木(切ったまま)で使い道のあるもの。例えば、列車の枕木や、塀にするための細い丸太材などがありますね。

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そして製材してから流通されるもの。主に「木材」と呼ばれる板状になっているものです。

いろいろありますが、私が家具で使っているのは、後者の製材して人工乾燥され、製品として扱われているものがほとんどです。

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(合板に貼ったり、私が象嵌にも使っている「突板」は、丸太を蒸してスライスしたり、そのまま薄くスライスしていますので、また違う製法と言えますが)

木には、比重というものが大切な要素になっています。

「比重」は言葉を調べるととても難しいのですが、木に限って言えば、水に浮くのか沈むのか、という事でしょうか。

切ったばかりの丸太を1とすると、この丸太はまだまだ根から吸っていた水分がたくさん含まれていますから、乾燥してこの水分が空気と飽和した状態をその「木の比重」と考えます。

家具などに使っている木は、ほとんどが0.5から0.6という値にあるので、水に浮く材と言えます。

代表としては、ナラ、タモ、楓(メープル)、ケヤキ、クルミ、サクラ、パイン(松)などです。

例外では、お仏壇などに使われる高級材、黒檀(コクタン)、紫檀(シタン)などは1.0を越えます。

要は、とても重くて硬い材と言うことになります。水に沈みますから、船にはなりませんね。

木はさらに「広葉樹」「針葉樹」と葉の大きさ、種類によっても大別されています。

広葉樹は、まだ独特の葉の形のあるものが多いですから、何とかいくつかの種類は言えますが、例えば、松の葉(あのとげとげしている葉)を見て、細かに種類を言えるのは森で実際に働いている方を除けば、大学の農学部で森林学を学んだ方くらいなものではないでしょうか?

では、こうしたものを詳しく学ぶ本はないものか、と探してみたことがあります。

「森林・林業百科事典」なるものがあり、これには「森林・林業・林産業に関する膨大な情報と最新の知見を網羅」とあり、家具や象嵌に関する材料についても、例えばアフリカ材の輸入に関する所見などが書いているようでした。

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木工をしていて、こうした図鑑がそばにあればもう少しいろいろな木の名前も覚えるのかな、と思ったんですが、この百科事典、値段が35000円くらいしていました、いまだに買うには至っておりません。

もう少し簡易版でいいから、手が出やすいものだったらなーと思います。

仕方がありませんが・・・。

そんなこんなで、かなり言い訳がましくなりましたが、できれば「聞いてくれるな、生えている木は!」が私の本音です。

家具の材料になるもの以外は、すみません、本当にわからないです。すみませんっ!

ところで先日、大学で授業をしていると、窓から見える隣の林で木の伐採をしていました。

川の淵に植えていた木をチェーンソウでバッサリと切っています。

「柳?か? ハンの木か?」と思って見ていたのですが、一緒にいた学生に「先生、あれ何の木ですか?」とやはり聞かれてしまいました。

実は、生の木を削ってスプーンやカップを作るワークショップをしてみたいとちょうど思っていた矢先でしたので、これ幸い!と授業を抜けて(もちろん学生に課題を与えておいて)、伐採している作業員の方に話しかけました。

答えはビンゴ! ハンの木と、柳の木を切っている所でした。

作業を止められて、作業員の方は不審な顔をされていましたが、かくかくシカジカ、詳しく話の説明をすると「じゃ後で大学の駐車場に運んであげるわ!」と快諾してくださいました。

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翌日、駐車場の指定した場所にたっぷりの、ハンの木、柳の木が置かれていました。感謝です!

製材された木は、乾燥して硬くなってしまうのでうまく削れないのですが、水分をたっぷり含んだ生の木は、曲線を描いた、スプーンやお玉などを作るには最適です。

ありがたい偶然に感謝です。

何とか今回は木の種類も当てられましたし、学生の手前、多少なりともメンツを保ったわけですが、まあしかし、もう少しだけ生きている木も勉強してみようかな・・・、と思う今日この頃なのです。

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投稿者プロフィール

Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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