「プロポーズに使って頂きましたよ!!」

「え?!」

そして送っていただいた一枚の写真。

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キャンドルに灯された、幸せそうなお二人の写真と一緒にあるこの小さな木の箱。
今日は、この箱をめぐる「幸せの物語」をご紹介します。

 

ご連絡を下さったのは、北海道富良野市にある“フラノ寶亭留” の林支配人でした。

“フラノ寶亭留” は、美しい富良野の森に囲まれた素晴らしいロケーションに位置するホテルで、目の前に広がる広大な庭には、ラベンダーを始め、季節の花々が咲き乱れ、遠く望む十勝岳や富良野岳の雄大な姿に、心も体もリラックスして心から癒される素敵なホテルです。

フラノホテル全国からこの景色、そして北海道でも屈指の美味しさの「フラノフレンチ」をお目当てに、四季折々たくさんのゲストが訪れているこのホテルですが、今回はこのホテルでの心温まる素敵なお話をお伺いしましたので、そのご紹介をしたいと思います。

林支配人から「こんな箱を作ってもらいたいのですが・・・。」とお話をいただいたのは今年の5月のことでした。

ホテルのパティシェさんが毎日焼いているオリジナルのタルトやマカロンを、お客様のティーブレイク用にお出ししているそうなのですが、このお菓子と一緒にお手紙や、ちょっとしたプレゼントが入るようにして、一緒に旅行しているパートナーや、ご家族の方にサプライズプレゼントの演出にしてもらえたら、と話が膨らんでいったのです。

箱の鍵を開けると、そこにはおいしそうなお菓子が並び、お菓子のトレーを取り出すと、そこにサプライズのプレゼントが現れる・・・。

なんだかとてもロマンチックで、心がポッと温まるようなこんなストーリーに、私の作った小箱が一役買うというのは、作り手としては楽しそうで、嬉しくなるようなお話でした。

寸法が決まり、デザインが仕上がって製作が始まりました。

小箱5

出来上がった箱がこちら。

象嵌box Shimada Akio

鍵も、市販のものは味気なく、上の部分を切り取って木のトップに付け替えました。

こちらが市販品のもの。

鍵 市販

そしてこれがオリジナルに作り替えたもの。

鍵 オリジナル

 

鍵を差し込み、カチッと音がして開くという、この「箱を開ける」動作というのは、作っている本人が言うのもなんですが、ちょっとワクワクして、何度やっても楽しくなってしまいます。

この「ワクワク!」という気持ちは、大人になっても失いたくない大切なものだと思うのです。

いくつかの作業と平行で行っていたため、出来上がりは7月も終わりに近づいたころでしたが、支配人にお渡しするととても喜んで下さったので、嬉しさとホッとする気持ちになり、「よかったな。」という思いでおりました。

象嵌小箱 鍵付

箱の外側だけでなく、今回は開けた時にも美しさを感じてもらえるように、箱の中も、トレーもすべてに象嵌を入れることにしました。

中はもちろん、裏までしっかり象嵌。これが私のこだわりです・・・。誰も見ないかもしれないんですが・・・。(笑)

象嵌小箱 裏

象嵌小箱 内側

そして8月の終わり、冒頭のようなやりとりがあり、この「木の箱」がプロポーズに使われたことを知ったのです。

「プロポーズBOX」 この箱は、そんな風に呼ばれるかもしれない、と思った瞬間でした。

林支配人のお話によると、年に何組かのカップルが、ここフラノ寶亭留でプロポーズをされていて、今までも何度か演出のお手伝いをされたことがあるそうなのです。

今回も、ご宿泊中の男性に、「今日プロポーズをしたいと思っているのですが、何か良いものはありませんか?」とご相談を受けたのだそうです。

朝にお聞きし、当日中にその演出をしなくては!となった時に、すぐに思い浮かべてくださったのがこの箱のことだったそうで、早速お見せしたところ大変に喜んでいただけたそうです。

男性がお持ちだったお二人のお写真、お手紙などを箱に入れ、お部屋の一角にキャンドルを灯し、バラの花をあしらったコーナーを作り、お相手の女性の方が部屋に戻られた時に初めて目にするようにスタッフの方で調整して、「その時」がくるのをお待ちになったそうです。

 

お相手の男性はもちろんですが、お手伝いされていた支配人、スタッフの方々、みなさんドキドキだったのだろうなーと思います。

知らない方のお話であっても、こういうドキドキする瞬間を考えるとなんだか胸が温かくなりますよね。

お相手の女性が箱の鍵を開けた時、その「想い」が伝わるその瞬間の場を、自分の作った箱が橋渡しするというのは、なんだか嬉しさと同時に照れるような、不思議な感覚です。

作り手としても、こんな幸せなお話のお役に立てたことはありがたいですし、嬉しいものですね。

「木の箱」を、象嵌をいれて作るということは、かなりの精度が要求されるためなかなか大変な作業ではありますが、林支配人に喜んでいただいたお姿や、こうしてプロポーズに携われるものになったということが、いま「箱作り」への情熱になってきているような、そんな感情を自分でも感じています。

11月にはこのフラノ寶亭留での展示会をすることになっていますが、期間中に新しい「木の箱」がお持ちできないかな、と思案している毎日です。

8月にプロポーズをされたカップルのお二人に、この場を借りて心からご祝福申し上げます。

どうぞ素敵なご結婚の日をお迎えになりますように。

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投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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