昨日、木象嵌の掛け時計をお届けしてきました。

お客様は札幌市内に住む女性の方で、象嵌の時計はメンテナンスのためにお預かりしていたものでした。

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このお客様は、ご自分の仕事場でも私の木象嵌の掛け時計を愛用して頂いており、一日の大半をこの時計たちのどちらかと過ごされています。

文字盤だけのシンプルさが特徴ですが、この文字盤の文字にこだわりをもって作った時計たちです。

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今回はご自宅のお引越しに合わせ、新しい住まいに、長く使ってきた象嵌の時計を、リビングのシンボルマークとしてお使いになりたいということで、機械の取り替えと全体のメンテナンスを施して、実際に壁に掛けるところまでやらせて頂きました。

伺ったマンションは新築のマンションで、まだ新しい匂いの中、片付けが終わっていない段ボールが部屋の隅に重ねられていて、「これから新しい生活が始まる」という感じがとても気持ちよく伝わってきました。

時計の設置後、マンション生活のあれこれを話していた時に、この木象嵌の時計の話になり、何かを「飾る」ことに制約の多いマンション生活では、時計一つでも部屋の雰囲気を左右する大切なアイテムであることを改めて認識したのでした。

「いいものは長く使っても飽きないし、一つあると雰囲気がぐっと上がるのよねー」

直径34cmの大きめの掛け時計です。部屋にあっても存在感がありました。

作り手としてはそんなお言葉を頂いて、何よりありがたいことだと思います。

毎日の生活の中で、好きな絵やオブジェを自由に飾ることができたらどれほど素敵でしょうか。

たった1枚の絵が、生活を豊かに変えるものであり、その空間の空気そのものを上質に変えることは何となくわかっていても、実際制約の多いマンションでは、色や大きさ、描かれているものによってはマイナスのイメージになってしまうものも多いのではないでしょうか。

これまでも、マンションにお住いの方からご相談を受けて「小さいサイズ」の木象嵌を作る機会がありました。

昨年の年末には、すでに数年お住いの、しっかりした生活の空間がマンションにできていた所に、新しく作品を飾りたいというご注文を受け、サイズもデザインも制約のある中での製作となりました。

出来上がったものは、お客様のご希望でもあった余白を活かした仕上がりで、周りに圧迫感を与えることなく、「すっとなじむ作品になった」ととても喜ばれました。サイズは写真のものでW60cm H45cmほどです。

予算をお聞きし、その中で製作できるものを提案できるので、サイズの小さなものでも十分満足して頂いたようです。

岩澤さま 蓮 塗装あがり

 

どんな家、マンションであれ、実際に生活されている空間には「木」を使っている場所がとても多いはずです。

壁や、床、そしてテーブルを始めとした家具類も、大半は木製のものばかりだと思います。

そもそも暮らすということは、例えばカーテンやラグなどのテキスタイル製品だったり、照明器具だったり、TVや家電製品などがあったり、と、「木」という囲みのなかに、こういったアクセントにもなる生活用品が配されている、それこそが「暮らし」だと言えます。

生活のベースは「木」。そのようなご家庭がほとんどなのではないでしょうか。

そのような空間に、失敗のない、「すっとなじむ」調度品を選ぶのはなかなか大変なことだと思います。

よほどセンスに自信があったり、美術関連の知識が豊かな方であれば、こんな心配などないと思います。

でも、普通に暮らしている人にとって、インテリア雑誌に載っている写真のように設えるのは、そう簡単なことではないはずです。

何もないまっさらなゼロからのスタートであれば、すべてトータルにコーディネートすることもできますし、飾るものも計算づくで購入していけばいいわけです。

でも、そんなことはほぼ不可能ですよね。

これまでもずっと一緒に暮らしてきたモノたち、そして新たにプラスするものを、どこにどう配置するのか、何を飾るのか。

そして、何より、マンションには、飾れる数に限りがあるのですから、毎日眺めるもの、必要なもの、好きなもの、と、すべてに考えを巡らせていかなければ、部屋の中はものが溢れ、多種多様な色が混ざることで雑多な印象になってしまいます。

ここにもし、さらに新しくアートをプラスするのであれば・・・。

アートプラス実用性を兼ね備えた掛け時計は、そんな要望から生まれたアートの一つです。

下の写真は直径36cmのもの。大きめですが、控えめな花のモチーフが存在をアピールし過ぎず、可憐な印象をお部屋にプラスします。

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このように、マンションに飾るアートを選ぶコツを一言でいえば、「トーンを揃える」ことが一番重要な鍵になってきます。

カーテンや、ソファ、ラグ、と言った面積の広い家具類。また本棚に並んだ背表紙の色合い。

そんな色たちと調和するのは、柔らかい色合いのグレイッシュ、ベージュ系、のアートと言えます。

今はインターネットでも簡単に美術品や絵画が購入できます。中にはアプリを使って、自分の部屋の写真を撮り、そこに販売している絵画やオブジェを落とし込んで確認することも可能なサイトも出てきています。

価格も数千円から数万円程度で購入できるものもありますし、今後はこういったアプリもさらに進化を遂げて、3Dで見ることもできるようになるそうです。

言ってみれば、アートを飾る疑似体験ですよね。

でも、やはり、本当に自分の暮らしの空間に合うのかどうか、は最終的には自分の目が決めるものでしょうし、アートに限っては直感ともいうべき「好き、嫌い」がありますから、アプリの進化がすぐさまアートの選択肢を広げるものになるかどうかは、まだまだわからない部分です。

「何を飾ったらいいのか」迷ったら、「木」を選択の真ん中に考えてみると、部屋の雰囲気に馴染むものが自然と見えてくると思います。ベージュ系のトーンから考えて、次第に色を広げてみれば、違和感のあるものは自然に避けることができるはずです。

マンションで飾るアートに、木象嵌が支持されているのは、何より「木」を使って、その自然の色と木目だけで表現しているものだからかもしれません。

部屋の雰囲気に馴染むという点でいえば、これ以上ナチュラルなアートもないでしょう。

富良野のホテルで展示した時にも、「ホテルの格が上がる」というお言葉さえいただいた木象嵌は、どんな暮らしにも寄り添える、優しく、そして許容力の大きいチカラ持ちアートだと言えます。

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限られたスペースだからこそ、最大限に真価を発揮できるものを。

これからもお客様と一緒に木象嵌作品を考えて行きたいなと思っています。

 

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投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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