木象嵌で紡ぐ

「出会い」と「想い」

ギャラリーや美術館で作品を見つめる。
人と出会って、その人の話し方や想いを知る。
出会いの一瞬は歓びの瞬間であり、美しいものや人に出会った時の人の表情は輝いていると思います。
そんな美しい光景が、この木象嵌によってもたらされたら・・・。


私の想い  

工房を設立したのは、2001年の夏でした。
日本各地での木工修行の後、スウェーデンでの留学・工房勤務を終え帰国してすぐの事です。

れ以来、たくさんの方に支えられて製作活動を続けてこられたことを心から感謝しています。

私の木工の原点は、少年時代に見た一枚の木版画でした。
映りこんだ木目の美しさを見た時の感動と驚きは、私の心に深く刻まれ、三十数年経た今もなお、私の製作活動の支えとなっています。

以来、「木と向き合う」ことだけを考えひたすら製作に打ち込んできました。
どんな空間にも似合う「シンプルな家具」。
日本の直線美と北欧の家具の技術を駆使して作る「上質な小物作品」。
自然の木の色、木目を生かして作る「木象嵌」。
家具職人、木工職人として恥じない仕事をしたい、その想いでひたすらに作ることに向き合ってきました。

そして、2007年にその功績を認められ日本人としては初となるスウェーデン家具マイスター(スウェーデン国家資格)の称号を頂くことになりました。

それをきっかけに、自分にしかできない「木仕事」、自分にしかできない作品作りをもっと追求したいと思うようになり、日本ではあまり作る人のいない「木象嵌」と「木象嵌家具」を作る事で、「唯一無二」のものづくりを目指しています。

象嵌ベンチ

数年前、自分の作っている作品が「工芸」なのか「アート」なのかと考えていたことがありました。
そんな時に「藝」と書いて「わざ」と読むことを教えて頂く機会があり、それを知って新しい道を発見したような気持になりました。
「技」を「藝」に変えてゆく。
それは私の作家としての使命であり、打ち込むべき道のように思っています。
工芸とアートのはざまで、存在感のある作品を作り出すことをこれからのテーマにしようと決意を新たにし、今日もまた工房で「木」と向き合っています。
その作品は、「唯一無二でありながら、自然であり、人の心に寄り添う温かいものであるように・・・。」
そう心掛けながら、これからも日々精進し、新しい息吹を吹き込む作品を作り出して行きたいと考えています。

2023年 1月 島田 晶夫