DM

2022年もいよいよ残り2週間となりました。
今年も本当にあっという間の一年間でした。

何より11月の個展が無事に終わってホッとしています・・・。
札幌三越での2度目の個展、そのご報告とこの一年の振り返りをお伝えしたいと思います。

昨年に引き続き、札幌三越ギャラリーで行われた個展にはたくさんの方が訪れてくださりました。
本当に心より感謝しております。
この場をお借りしてお礼申し上げます。

個展の準備は一年がかりで進めてきました。
象嵌は一つ一つの作業にとても時間がかかるため、日々の注文、伝統工芸展に出展する作品の制作(東日本支部展、伝統工芸展)とバランスを取りながら制作をしています。
ただ、予定は立てるものの、その通りに進むことはほとんどありません・・・。
今年こそ、今回こそ、と思っているのに、いつも展示会前1か月は身体が5人分くらい欲しい・・・と思います。
これも展示会の恒例行事になっていて、苦笑いです。

今回の展示会では、初めて前面に象嵌をあしらった小箪笥を制作しました。

象嵌のデザインは、秋ということもあり「葉」にすぐに決まりました。
箱の展開図を描いて、そこに象嵌のデザインを落とし込んでい作業は楽しいものです。

この「葉」の作品は、北海道の主な樹種の木の葉を選んで制作しています。
ナラ、白樺、朴、セン、ニセアカシア、それぞれの木の葉をその木自身を材として嵌めている、自分でも好きな作品の一つです。

出来た小箪笥は展示会場の前面に配置し、ぐるりと全方向からご覧いただけるようにしました。

扉もカギを差し込み、そのカギが引手となる作りです。
これも自分では気に入っているモチーフです。
小箱などではよく使っているのですが、家具でこれを使うとワクワク感が増す気がします。


会場正面奥の壁には、私の代表作でもある「かぼちゃ」(スウェーデン・ヨブス社デザイン。ヨブス氏ご本人より使用許可をいただいています。)を飾りました。
私の制作している象嵌では最大サイズのものになります。

「かぼちゃ」と象嵌ベンチ

この他、会場にはフレームの高さを50㎝にそろえた「50シリーズ」、定番の「プチシリーズ」、トレー、箸置き、カトラリーケース、箸箱、香合、菓子器などが並びました。

50シリーズと文箱など
箸置き、コースター、プチシリーズ

象嵌入りトレー 左より「蓮」「葡萄」「葉」

連日多くの方においでいただきましたが、北海道新聞に記事を載せて頂け、記事をご覧になったという方も多くいらっしゃりました。
特に高校時代の恩師の先生が数名、「新聞読んだぞ!」とおっしゃって来場してくれました。
卒業以来ぶりという先生もいらっしゃいました。
何より私の名前を覚えていてくださったことを感謝でした。

自分が高校生だったころの先生のお歳を考えると、先生よりも今の自分が年上というのも可笑しく感じます。
でも、先生と生徒という関係はいくつになっても変わらないんだな…と心の中で思いました。
懐かしくも、若かりし自分の話には背中がむず痒い思いでした・・・。
先生だけでなく当時の友人も来てくれて、本当にありがたく思いました。
人の縁というのを改めて思い、感謝することができました。

伝統工芸展の箱を見ながら恩師と話すひととき。しみじみとしたひととき。


「個展」はモノづくりをしている人間にとっては特別なイベントです。
最終日にはホッとする思い、やろうと思ってやりきれなかった思い、次の個展への思いと、いろいろな感情が思い浮かびました。
来年も再び同じ場所で個展を開催できるよう、そして、また違った一面をお見せできるよう、作家として頑張ることが山のようですが、こうして訪れてくださる方に力を頂いてまた次へとつなげていけることに、感謝です。

今年は、このほかにもたくさんの方にお会いできた一年でした。
日本伝統工芸展では、今回で4回連続の入選を果たすことができました。
初めて工芸展に挑戦した支部展で、2年落選が続いて「もう止めようかな?」という思いになった時もありました。
でも、「正会員」を目指して気持ちを保ったこの4年間、やっと手した「正会員」でした。
本当に嬉しい思いで一杯でした。

ただ、まだまだ道は先に続いていることも実感しています。
道具も、これまでもいろいろなものを使ってきましたし、持っているつもりでした。
伝統工芸に挑戦するようになり、持っていたものでは間に合わなくなってきて、今年は職人さんが作ったノミ、カンナを新たに注文するという、ここ近年で久しぶりの経験をしました。
刃物を研ぐ、その基本的なことも「できているつもり」「なんとなく」で過ごしていたここ数年の自分に喝をいれてがんばっています。
刃物をつくる職人さんもだんだん減ってきていると教えてもらいました。
これも大切にしたい技だと、あらためてノミ、カンナを使いながら思います。

最近は若い方が工芸から遠のいているということが問題になっています。
でも、大切な技術の継承は、失ってしまうと二度と戻らないものでもあります。
目が、腰が、と言っている私の世代が言うのもなんですが、若いうちだからできることがたくさんあると思います。
一度や二度の失敗ではなく、10回、20回の失敗を経ないとできないものもあることをもっと知ってほしいと思います。
バーチャル主流になっていくこれからの時代、でも、本物はあくまで本物です。
本物を作る技術。
私もまだまだですが、こんなにもすごいもの、すごいこと、それを作り出せるようになる愉しさをもっと広く知ってもらえるよう、また個展に向けてがんばろうと思います。

2023年。
どんな年になるのか、どんな年にするのか。
大掃除に向け工房を少しずつ片付けながら考えています。
今年一年、本当にありがとうございました。
皆さまにとってもどうぞ良いお年になりますように心よりお祈りしております。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

お問い合わせ→こちら