2023年8月23日、この日は私にとって忘れられない一日になりました。
ここ何年も一つの目標としてやってきた、日本伝統工芸展での入賞を果たしたからです。

私が日本伝統工芸展を目指したのは、今から5年前の2018年でした。
偶然にもその前年に埼玉県で釡師をしている長野新さんが、札幌の三越で展示会をすることになり十数年ぶりの再会を果たしました。
長野新さんは私の高岡短期大学時代の同期の友人です。
とにかく学生時代は一緒にいることの多かった仲間の一人で、「同じ釜の飯を食う」とは言いますが、本当にしょっちゅうご飯を食べていたことを思い出します。

長野さんは釡師の3代目、金工作家です。
しかしながら、札幌での再会をするまではそんな目で彼を見たこともなく、純粋に気心の知れた友人でした。
札幌で会い、長野さんの仕事ぶり、工芸に対する想い、これからの日本のものづくりについて、そんなことを表裏なく聞いているうちに、「やってみようかな?」という思いになったことがきっかけです。

最初の2年はぜんぜん結果が出ませんでした。
今だから言えますが、伝統工芸のなんたるかなど、まったく理解できていなかったと思います。
それでバーン!と作品を送り、意気揚々としていた自分を思い出すとちょっと恥ずかしい気がして赤面です。

ただ、東日本伝統工芸展での2度の落選があり、その時に先輩、先生、たくさんの方に厳しくご指導いただけたこと、ここが大きかったと思います。
鋭く、しかし腑に落ちるお言葉の数々は、時にグサッと来ることもありました。
当時研究会に出席するために東京まで行き、先生の言葉をすべてノートにメモして帰るつもりで必死に書き留めた言葉の数々は、今でも読み返すと苦笑してしまいます。
当時小学生だった次男は、「お父さん、こんなこと言われるために東京に行っていたの?」と驚いていました。

けれどこれが私の創作意欲に火をつけました。
多くの人が厳しい指導を受けてそれっきり出品を止めてしまうと聞きます。
本当にもったいないです。
作品は階段を一段、一段上るように良くなると思います。
そのためには、先を行く方の助言、アドバイス、指導、これはどんなことでも甘んじて受け、自分のものにしなくてはならないと思います。
45歳を過ぎてからの遅すぎる出発でした。
でも私には、素直に訊きたいという思いの方が悔しさよりも強かったと思います。

ありがたいことにお電話でお話を聞いてくださる先生もいらっしゃいました。
北海道から聞きに出ていくことはそうそう簡単ではないことをご理解頂けました。
厳しく、そして人間味のある、時には涙の出るような激励の言葉の数々。

一緒にものづくりをする友人、知人も全国に増えました。
物を作っていると、ついつい自分の殻にこもる人も多くなります。
人の話に耳を傾けないという人もよく見かけます。

でも、私が出会えた方々は、みんな一生懸命で気さくに、そして時に互いに競い合う気持ちでお付き合いできる人ばかりでした。
この幸運も、私の今回の受賞の後押しになってくれたと本当に感謝の気持で胸がいっぱいになります。

今受賞に関して、いろいろな書類を書いています。
来月には日本橋三越で日本伝統工芸の展示が始まります。
受賞作品は全国の会場に展示していきます。
全国すべての会場で、自分の作品をご覧いただけること。
これも初めての経験となります。

とにかく受賞の喜びで頭の中で花火が打ちあがるようでしたが、受賞から一週間経ち、今度は来月の展示、そして授賞式、研究会、とこの後のことで頭がいっぱいになっています。

全国の会場、期間、詳細はこちらでも紹介していきたいと思います。
授賞式でのことや、研究会での先生からの感想なども、また来月東京から戻って報告したいです。

10月には札幌三越での個展も控え、喜びと忙しさに暮れる秋になりそうです!


作品はこちらのスライドショーでもご覧いただけます。
最後のページに掲載されております。

https://www.nihonkogeikai.or.jp/

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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