「世界に一つだけの、二人のベンチ・・・」
昨年11月に、一組の素敵なカップルが結婚式を挙げられました。
東京にお住いの景山様ご夫妻です。
上の写真は、2次会のパーティでのもの。
新郎から新婦への「結婚記念サプライズプレゼント」に贈られた、世界で一つだけの木製ベンチなのです。
このベンチは、新郎である景山様の「想い」のありったけが込められ、そしてその「想い」を「カタチ」にしたいとお手伝いさせていただいた私たちの「歓び」を込めて製作した「世界で一つだけのベンチ」です。
今日はそんな「木製ベンチ」を巡るハッピーストーリーをご紹介したいと思います。
昨年の夏の終わり、一通のメールからこの物語は始まりました。
「ホームページを見て、木製ベンチを作ってもらえないかと思いご連絡しました。」
そう書かれたメールには、何か心が温かくなるようなものを直感的に感じました。
このメールを送って下さったとき、景山様は海外出張に向けて空港のロビーにいらっしゃったそうなのです。
景山様は「ノッティングヒルの恋人」と言う映画の大ファンで、この映画に登場する木製のベンチをモデルに、結婚予定だった奥様に贈る結婚記念の品としてオーダーメイドで製作してくれる木工作家を探されていました。
たまたま見つけたwebサイトの象嵌作品に興味を持ち、ご連絡して下さったのです。
日本全国、木工作家はあまたの数いると思うのですが、最初に見つけてくださったのが私だったと後で知り、ますますご縁を感じました。
景山様のご希望は、「結婚の記念品であること」「暮らしに溶け込み、くつろげるものであること」「いつか子供ができたら、家族で座れる丈夫なものであること」という、「家族のシンボル」として永く寄り添えるものを作りたいというものでした。
メールと電話でのやり取りで、「こんな感じに」「寸法はこれくらいで」「予算は?」などなど、細かい打ち合わせを進めて行きました。
ご結婚までもう2か月、そんなときに景山様は超多忙なご生活をお送りしていて、「メールの返事来ないけど、どうしたのかな?」と思っていると、海外、国内の出張で、あっちへ飛び、こっちへ走り、と地球を股にかけてご活躍のご様子。
工房にいることが多い私には、何よりお身体が心配になってしまうほどでした。
ベンチのデザインが決まり、樹種は奥様のお好みを熟慮されてアメリカンブラックウォルナットに。
そして座面は総木象嵌。
参考にしていただいたのは、定番商品のこちらのベンチですが、今回はこのベンチを基に、背もたれがあり、ひじ掛けもマグカップが置けるくらいたっぷりと幅を持たせ、クッションを置いてもゆったりと座れる、世界に一つだけのオリジナルデザインのソファベンチを製作することになりました。
イメージ図がこちら。
使う材料も、自分の目で見て納得できるものだけを厳選してきました。
これを切って削ると、とても良い木目が出てきます。
さあ、張り切って製作開始です。
一番時間がかかるのは、座面の木象嵌部分です。
小さく切ったウォルナットの突板を、縦に、横に、とチェック柄を作るように並べて嵌め込んでいきます。
木目が美しく見えるように、木目を見ては選んで嵌め込み、また次の突板を切り出して・・・。
できたものをプレス機で圧着している間に、ベンチの本体も作っていきます。
本体が仕上がりました。
そして、この背もたれの真ん中部分に、景山様ご自身で考えた奥様へのメッセージを真鍮プレートに刻んでとりつけることになっています。
真鍮のプレートは金工作家さんにお願いして製作してもらいました。
景山様はご注文当初から、製作の一端を担いたいとおっしゃていて、お忙しいスケジュールを工面して11月の始めに東京からはるばると当別の工房までお越しいただきました。
自分の手をかけることで、さらに愛着がでること、そして、想いも込めたいと言うことで、仕上げの塗装と真鍮プレートの取り付けをお願いすることにしました。
奥様には「大阪に出張してくる。」と言って、こっそりとダウンジャケットを鞄に押しこんで来られた景山様。
おいでになったこの日は北海道でも例年にない早い雪になっていて、千歳空港からレンタカーで当別に来られたのですが「びっくりでした!」と苦笑されていました。
一緒に会社の同期というご友人も工房にお見えになり、お二人で早速ベンチとご対面です。
埃よけのタオルケットを取ると・・・
「おおおおおお!」
「これは想像以上だ!」
早速シャッターを切っている姿、そして嬉しいお声をいただいて、こちらもホッと胸をなでおろします。
お気に召して頂けるかどうか、それは、いつでもどんな作品でもお客様の喜びの声を頂けるまでは心配でならないことです。
でも、嬉しそうなお声を聞くと、不安な心は一瞬で快晴のスカッとしたさわやかな気持ちになります。
モノづくりをしていると、この一瞬が私にとって最高のプレゼントになっていると思います。
早速、仕上げの塗装をしていきます。
初めてという景山様ですが、もくもくとオイルを塗っていらっしゃる様子は立派な職人姿です。
プレートも釘で固定します。
ベンチに最大の「想い」が込められた瞬間です。
なんだか見ているこちらもドキドキ、わくわくです。
幸せのおすそ分けをもらった感じでしょうか。
「できたーーー!」
即、記念撮影中。
座っちゃいました。
くつろいじゃいました。
そして仲良し同期3人組で一枚。
お疲れさまでした。私も、本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。
こうして使って頂く方ご自身が製作に携わってもらえることで、より身近にそしてより愛着を感じて頂けるのではと思います。
永くお付き合いして頂けることは、作り手としてありがたいことだと心から思っています。
さて、景山様ご一行が帰られてから、ベンチは塗装が乾くまでしばし工房でお預かりし、最終チェックを行ってから今度は東京の結婚式2次会会場へと送る手配をとっていきます。
木枠にベンチをいれ、配送業者のトラックで一路東京へ。
旅立ったベンチは配送のドライバーさん、2次会のコーディネーター様、そして会場のスタッフの方々のご協力で、無事に2次会のパーティ当日にスタンバイされました。
前夜まで準備に追われていらっしゃったと後でお聞きしましたが、このご様子を見ると、そんなご苦労も「幸せ」にすべて変わっていったのがよくわかります。
お送りいただいた写真もご紹介させて頂きます。
お二人のお幸せそうなお顔が本当に嬉しくなってしまいます。
景山様ご夫妻の末永きお幸せの時間を、ベンチが共に紡いで行きますように。
北海道当別の地より、心からお祈り申し上げております。
投稿者プロフィール
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1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。
お問い合わせ→こちら
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