ここは東京上野の東京国立博物館にある、転合庵です。

 

ここで、「春功会」という「茶道を学ぶ作家の作品を使った作家席」を設ける企画があり、今回お誘いを頂いて参加させていただきました。

「お茶」は今まで興味はありながらきちんとした形で勉強したことはなく、偶然学生時代の友人と昨年再会したことがきっかけで、今回の風炉先屏風(ふろさきびょうぶ)作りへつながっていきました。

その友人と言うのは、埼玉で茶釜を作っている長野新さんです。

私の象嵌を見て、お茶の道具を作ってみてはどうか?と提案され、それでは、とデザインを考え始めました。

「春の茶会」ということで、春の花をモチーフにしたいと思いましたが、北海道とは季節が違うので長野君、長野君の奥様とも相談しながら「牡丹」をテーマにすることに決めました。

今年は利休が亡くなって450年の節目にあたるため、記念の行事や、お茶にまつわる展示会、雑誌でも特集が組まれるなど、ちょっとした「お抹茶ブーム」の様相ですよね。

外から眺めていた身としては、「へえぇー」といった具合でしたが、茶会に参加すると決まってからはググッと身近なものになった「お茶」の世界。

知らないことがたくさんありますし、奥の深さは底知れず、といった感じなので正直まだまだこれから、と自分でも思います。

でも、今の自分の技術で、この深い世界に挑戦してみること。

それは久しぶりに感じる、ゾクゾクとしながらも、ワクワクが入り混じったような不思議な感情を私に抱かせました。

まず牡丹の絵を書きます。

象嵌することを念頭にした絵なので、少しデフォルメしています。

しかしながら、ふわふわと飛ぶ「蝶」を加えることで、そこに息吹が吹き込まれたような思いがしました。

絵としては良い出来だと思いますが、さて問題は象嵌の作業です。

赤い花と白い花。

その相対する色の違いを出しながら、主張しすぎることがないように表現すること。

「お茶」に精通されている方は、ものを見る目も深いはずです。

中途半端なものでは、ほかの作家さん達にも迷惑がかかります。

緊張して作業する日が続きました。

少しずつ少しずつ、花が咲くように色が広がります。

そして実際には3cmくらいの大きさの蝶もできました。

蝶の触覚は、今までの細かい象嵌仕事の中でも、1番2番を争う細かい作業になりましたが、仕上がりは自分も納得です。

自画自賛するわけではありませんが、数年前にはここまで細かい象嵌はできなかったかもしれません。

日々の積み重ねが、まだまだ自分の技術を高めていることに、感謝と謙虚の思いを新たにしました。

京都から「風炉先屏風」用の金物も届き、北海道産のキハダで作った本体も組み上げて行きます。

塗装するとぐっと色の鮮やかさが増し、木象嵌という技術が放つ、「木」の穏やかで力のある世界が広がりました。

 

やっと一息です。

でも、もう時間がないので、すぐに木箱に入れて、埼玉に発送です。

名前も「木象嵌牡丹文屏風(もくぞうがんぼたんもんびょうぶ)としました。

今回は、この風炉先屏風の他に、敷板「木象嵌市松文」を納めました。

佐藤典克さんの白い花入れを引き立てるよう、ブラックウォルナットという胡桃の木を、木目を市松にして象嵌したものです。

また、席にお入りになるまで待って頂くお客様にご覧いただけるよう、急きょ、小ぶりのフレーム象嵌を用意しました。

「市松七宝文様」

「南瓜」

「蓮」

埼玉に無事に到着して、長野君に梱包をほどいてもらいました。

すぐに電話が鳴り、「あのさぁ・・・」の後しばし無言の受話器の向こう側。

「いまいちだったのか?」、「ダメだったのか?」

不安がいっぱいに広がった一瞬のあと、「お前、これすげーなー」と友達言葉での賞賛の一言。

「早くそれを言えよー!」と思いましたが、長いつきあいの友達の率直な言葉に嬉しいやら、可笑しいやら。

これで安心して東京に向かえます。ほっ。

お茶会前日の東京は、満開の桜でした。雪の北海道とは違うなー、とちょっとだけお花見を先取りです。

転合庵では、ほかの作家さんの作品も並び、準備が整いました。

茶釜や煙草盆、お棗など。

お茶会当日の様子です。

 

170名以上の方がお茶を楽しんでいただき、スタッフとしてもホッとしました。

今回、ドキドキしながらの参加でしたが、「木象嵌を初めて見ました。」や、知ってはいたけれど「風炉先屛風になっているものは初めて」という方がいらしたりして、いろいろなご意見を頂いたことは大変貴重な経験でした。

そして夏に向けて何点か製作させて頂けることにもなりました。

木象嵌+お茶道具。

このコラボはまだまだやってみたいことがたくさんありそうです。

新しい分野への初挑戦でしたが、大きな収穫を頂きました。

最後にご参加していた作家さんのご紹介です。

春巧会 薄茶席 会期
床   蜘蛛の巣 葦手絵  根本 知
花   緑一種 季の物
花入  縒花入       佐藤典克
敷板  木象嵌市松文    島田晶夫
合子  線刻金彩合子    中村大朋
風炉先 木象嵌牡丹文屏風  島田晶夫
釜   車軸釜       長野 新
鎖   釜釣金具      寺西宗山
炉縁  俱利文炉縁     木内史子
水差  釉彩水差      田中隆史
薄器  刀痕文中次     木内史子
茶杓  六三四     二代長野垤志
茶碗  華茶碗       田中隆史
替 黒彩陶茶碗       福野道隆
白磁茶碗 縒        佐藤典克
蓋置  五徳蓋置      長野 新
茶   花橘      奥西緑芳園詰
菓子  春の夢       大和屋製
菓子器 金の星 銀の空   西中千人
莨盆    桜文莨盆       木内史子
火入  色絵華文火入    佐藤典克
煙草入 萌黄小菊唐草文   伊藤直樹

皆さん、本当に素晴らしい作品を作っていらっしゃいました。

ますます精進していきたいという意欲が湧いてきます!

早く多くの方に見ていただける機会を設けたいと、強く思っています。

どんどん作らないと~。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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