今日は、先日頂いたとてもありがたいお手紙をご紹介したいと思います。

読んでいるうち、お会いしたことのないはずのこの方に、私は思い切り背中をたたかれて「がんばりなさいよ!」と激励されている気持になりました。

まるで背中をたたかれている、その手の温もりまで感じるかのようでした。

お手紙は四国に住むO様からで、今から5年ほど前に偶然ご旅行にいらした富良野の地で私の木象嵌「Forest」をご購入頂いた事がきっかけで、その後も他の作品をご自宅にお迎えいただいておりました。

 

昨年、伝統工芸展の入選のご案内を差し上げており、四国での展示会を心待ちにして頂いていたご様子でした。

「お便りありがとうございます。
ご入選おめでとうございます。 よかったですね。」

達筆でそう書き始められたお手紙には、

「私方に来ました絵(象嵌Forestのこと)は何年か前にかけたまま、一ミリも動かず、私の部屋で

自然ていいだろう

と笑っております。

大切な私の宝物です。」

と続いていました。
私の作った象嵌達は、四国のO様のお部屋で大切に飾って頂いていたのです。

「そして高松で展覧会。

うれしく、懐かしく、参ります。

どんなお人でしょうか・・・・。

そして我が家は○○○駅の真前です。

お時間を作っておいでくださいませ。

おいしいおうどん、いかがですか。ご一緒にいただきたいです。

楽しみにしてお待ちしております。」

そして、うどん屋さんの詳しいご説明があり、月曜日が定休日とも書いてあります。

「割とおいしいです。

瀬戸のお魚が楽しめますので、お時間をお作り下さい。

ご案内いたします。

お時間は造れば出来るものですから、どうぞおいでください。

走り書きで失礼いたします。」

丁寧なお言葉。
そして、私に会ってみたいとおっしゃってくださる強いお気持ち。

時間は造ればできるもの。

その通りです。

すぐにでも四国へ飛んでいき、O様と熱々のおうどんをいただきたい、と心から思いました。

そしてお手紙は最後にこう結んでいらっしゃいました。

「お寒くなります。

御身大切にしていろいろと頑張ってください。

私は八十三才。

いろいろと頑張っております。

じゃ、さようなら。

島田様」

象嵌の作品が結んでくれたO様とのご縁です。

作品以外について私たちはお互いに顔も知りません。

事務方を担当している妻が作品のお届けに関し、何度かお電話でお話させて頂いておりましたが、その他には展示会のご案内を送っているだけで、しばらくお話もしておりませんでした。

それなのに、こんな温かいお誘いを頂けたことに、はじめはとても驚き、何度か読み返して、今度は涙が出そうになりました。

ありがたい。

そう心から思いました。

そして本当に残念なことに、私の入選作品は四国での展示会には出展されない事を事務局から連絡を受けていたのです。

広い展示会場でも、スペースに何の問題が無くても、展示されるもの、展示されないもの、そこにははっきりと線が引かれているのでした。
悔しいですが、私の作品は、まだまだ若手の挑戦作であり、全国の展示会のおよそ半分の会場でしか展示してもらえませんでした。

四国で展示してもらえることが、もし仮に決まっていたとしたら、私は迷わず航空券を予約したと思います。
是非O様にお会いして見たいと思ったからです。

でも、それは叶わない事。

お手紙を頂いた翌日、妻からO様に事の次第をお電話でお話させて頂きました。

「(伝統工芸展は)そんな甘いもん違うでしょ。

仕方のないことだし、またこれから頑張ればいいんだから。」

最初に頂いた言葉。
それはご覧頂けずに「残念」とか「わかりました」とか、そんなご自分のことをおっしゃる言葉ではなく、何より私を気遣っていただいた「励まし」の言葉でした。

「次はどこかで見れるの?

他に展示する会場はあるの?」

とお聞きになったそうで、2月13日から広島の会場でご覧頂けることはお伝え出来ました。

「自分一人ではそこまでは行けないから、家族の予定次第だけれども、私は行ってみたいから、誰か(連れて行っても)いいという人がいてくれたら見てきますから。」

そう優しくおっしゃってくださったそうです。

その後で、初めて富良野で作品をご覧になった感想と、どうして買おうと思ったのか、そんなことをいろいろ教えて下さったのだそうです。

「私な、娘らに北海道に連れて行ってもらったんです。

その前の年に主人を亡くして、そんなことの気晴らしに旅行に連れていってくれたんやわ。

それで泊まったフラノ寶亭留で、夕食までぶらぶら館内を見てまわっててな、階段を下りてパッとみた大きな壁にかかっていた3枚の絵ね、あれ見た瞬間、ああ、これはうちに持って帰ろう、ってすぐに決めたんよね。

もう歳でしょ、もう欲しいものなんてそんなないのよ。

だから、欲しい、と思ったらすぐに決めるの。

それであの絵、この部屋に来たでしょ。

本当に毎日見ていてもいいんやわ。

気に入ってるし、ありがたいと思ってます。

ご主人によろしくお伝えしてね。」

そうおっしゃって電話は切れたそうです。
妻まで嬉しさに泣きそうになったと言っていました。
本当に有難い話だと思います。

勝手なお願いかもしれません。
でも、O様にぜひ私の象嵌の小箱をご覧頂きたいな、と心から願うばかりです。

こうして北海道から遠く離れた場所で私のことを応援してくださいり、作品を愛でていてくださる方がいて下さることを、この一通のお手紙が私に教えてくれたのでした。

まだまだ挑戦の日々は続くと思います。
ダメでも、難しくても、何度でも挑戦して行きたいと思います。

そしてできるなら、四国の地でも、全国のどこの会場でも展示してもらえるよう、多くの方にご覧頂けるよう、この悔しさをバネにまた頑張っていきたいと思います。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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