この箱は、お母さまから花嫁になる娘様へのプレゼントとして制作したものです。
大切な日のために、世界で一つだけの贈り物を・・・。
一生懸命に考えていらしたお母さまのI様からご連絡を頂いたのは5月のことでした。

I様から問い合わせをいただいたのはこのホームページをご覧いただいてのことでした。
メール、そしてFAX、I様から頂いたお問い合わせは、娘様を想うI様のお気持ちが一心に伝わってくるような内容でした。

これまでに作った箱の説明や実際の写真をご覧いただき、どんな箱にしていくかお話しさせていただきました。
今回は、入れたいものをお聞きして、今まで作ってきたものより少し大きな箱にすることになりました。

象嵌のデザインの話になった時、「飼っている犬を箱に象嵌したいんです。」とお話しされました。
愛犬象嵌、そして箱の初のコラボです。
どこまで細かく象嵌できるのか、不安もあり、わくわくもあり、とりあえずお写真をお預かりすることになりました。

届いた写真がこちらです。

つぶらな瞳、愛らしい表情、あまりの可愛さに見ているだけで癒されるようなワンちゃんです。

そして、思わず唸ったこと。
それは、このトイプードル特有の縮れ毛です。
これをどうやって木だけで表現していくか、トイプードルは初めての経験だったので「大丈夫かな」という一抹の不安もありました。

でも、とにかく写真をよく見て、色の分ける部屋割りを考えることにしました。

まずざっくりとした下絵です。

こちらをI様に確認していただいて、テストピースを作ることにしました。
実際、作ってみないとわからないところが多く、制作しながらベストな組み合わせを考えていくことにしました。

同系色でも少しずつニュアンスが違う木を組み合わせます。

おもっていたより「ミリちゃん」感が出たのではないかと、ちょっと嬉しくなりました。
毎日毎日見ていたミリちゃんの写真です。
表情が出てくれたのが一番嬉しかったです。
I様からもOKのご連絡を頂きました。とても喜んでくださって、心からのホ~っとなりました。

本番制作です。
箱の中も市松模様の総象嵌、そして鍵もつきます。

中はこんな感じに。

裏もしっかり象嵌しています。

結婚式の3日前にお届けです。
間に合って、よかったーーー。

結婚式の後、I様からご連絡を頂きました。
「この箱は、結婚式の前、ウェディングドレスを着た後でコーディネーターの方からお渡し頂きました。
びっくりして、嬉しそうな娘の顔を見て、本当にいいものを贈ることができたと思いました。
ミリちゃんは娘が本当に可愛がっていて、この大好きなミリちゃんを箱に入れてもらえたらと思って作ってもらいました。私や夫も自分たちにも欲しいくらいだね、と話すほど、家族にとって大切な贈り物ができました。」

そうおっしゃっていただき、私も本当に嬉しい気持ちでした。
お幸せそうな娘さんのお写真を頂き、私も本当に温かい気持ちになれました。

実はミリちゃん、結婚式では新郎新婦のために、首に指輪をつけてもらってお届けするという大役を仰せつかったのだそうです。
どうなることかとハラハラしていたご両親でしたが、みりちゃんは会場のお客様に愛想を振りまきながら新郎新婦の元にいき、指輪を無事にお届けできたそうです。
ミリちゃんの晴れ姿です。

I様、ご家族皆様、本当にご縁をいただいてお仕事をさせて頂けたこと、嬉しく心からの感謝でいっぱいです。
皆さま、そしてミリちゃんの幸せな毎日を、ここ当別町から心よりお祈り申し上げます。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

お問い合わせ→こちら