雪が解け、初めての春を迎えた家があります。
Uさんご家族の新しい素敵なお住まいです。

Uさんは当別町内にあるロイズタウンで私の象嵌を目にする機会があったそうです。
そして新築の家を建てる計画が出たときに、その新しい新居に「紫陽花」の象嵌を飾りたい。
そう思ってくださったそうです。

間もなくマイホーム計画は現実のものとなり、象嵌をお迎えいただくこともお決めくださいました。

ロイズタウンではサイズが大きなものを展示していただいています。
場所も広く、天井高もあり、サイズ感が一般の家と少し異なって感じられます。

ロイズタウンの展示風景。

そこでUさんに工房にお越しいただき、サイズとデザインの打ち合わせが始まりました。
ただ、実際に飾る予定の空間はこれから出来るところです。
壁に合わせてというわけにはいかないので、大体のサイズを決めて、花の雰囲気などを大雑把に決めました。

そして正確なサイズはご自宅に戻って頂いてから、新聞や包装紙などを壁に当てて頂き、お好みの寸法を割り出していただきます。
実は工房も一般の家と違って天井が高く空間も広いのでどうしてもサイズが小さく感じられてしまいます。

ですので大体の目安をもとに実際の家の中で壁に紙を当ててサイズ感を見る、この方法をお客様には良く取って頂いています。
今回もいろいろと試して頂いてお好みの寸法を決めて頂きました。

次に下絵を描いていきます。
大体の花のデザインはありますが、そこからサイズに合わせてスケールダウン。
花の数なども慎重に絵に落とし込んでいきます。

下絵のイメージ画が出来ました。

使う樹種は決まっていましたが、フレームは飾る壁との相性もあるので何度か相談しながら決めていきます。

いよいよ象嵌作業です。
花びらの数が多いのが紫陽花の象嵌の特徴です。
そしてこの花びらを一枚一枚、同じ木であっても木目やわずかな色の違いを活かして象嵌します。
そうすると、立体感が出てくるところが面白い所だと思っています。
実際にこの象嵌は、正面、右、左、と見る角度を変えることで花びら一枚一枚が違って反射してキラキラと表情を変えます。
これもまた飾る場所でも変わるので見る方に楽しんでいただきたいポイントです。

フレームの施工が終わりUV加工を施したガラスを嵌め、完成です。
早速U様ご夫妻にご覧いただきました。
喜んでいただけてホッとします。

納品はそれから少し経って、新築の家が出来上がりお引越し後すぐの事でした。
この象嵌を飾って頂くことを想定して選んでいただいたグレーの壁。
そこにスッと馴染むようにこの象嵌が飾られて、お写真を拝見した時に本当に嬉しく思いました。

私の手元で制作した時間はそう長くはありません。
でも、この後この象嵌はU様ご家族の一員として末永くこの家で一緒に過ごさせて頂くのです。
そう思うと喜びもひとしおです。

毎日玄関でご家族皆様の「いってらっしゃい」「おかえりなさい」
そういってお迎えできたら、こんなに嬉しいことはないです。
「どうぞよろしくおねがいします。」
心の中でそっと願っております・・・。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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