I様との出会いはもう4年以上前に遡ります。
「椅子」を作ってもらえたらとぼんやりお考えだったI様は偶然に私のことをお知りになったそうです。

実はI様も北欧に留学された経験がおありでした。
北欧のデザインやモノづくりへの考え方。
長く使うことで愛着をもつことが出来る数々のアイテムをご覧になったとおっしゃいます。

そんなI様はご自分の「欲しい」を形にしてみたい、そんなお気持ちをお持ちでした。
お会いした時にはイメージも漠然としていらっしゃいました。
そこでご自分の好きなデザインの椅子やイメージ写真などをまずは拝見したいとお伝えしました。
私が作ったイージーチェアもご覧いただきました。


サイズ感や、雰囲気、それをこういった資料から掴んでいくのです。

そこからお好きな色や木の雰囲気。
一人掛けなのか二人掛けなのか。
座り心地や、どこでどのように使うことになるのか。
そんなやり取りが続きました。

I様は定期的に北海道にご出張されていたので、その折に工房にお立ち寄り頂き具体案を詰めていくことが出来ました。

ところが、すぐにコロナの波が押し寄せ、そこからほぼ2年間はお会いすることが叶わなかったのです。
工房でお会いすることができたからこそ、その後もやはり時間を置いても工房で最終の打ち合わせをすることにして、ゆっくりゆっくりと時間をかけながらの椅子づくりでした。

途中で使用予定の材もナラ材から桜材に変わりました。
北海道にご縁のあるI様に、北海道の桜材をご提案しました。
材料は自分の目で買い付けをしました。

良材を入手することもでき、制作が始まるまでじっくり工房で寝かせることが出来ました。

コロナが落ち着きを見せ、I様に工房にお立ち寄り頂けるようになってから具体的な最終案をまとめていきました。
オリジナルのデザインで、座面も本革にこだわり細かいデティールまでしっかりと作り込めました。
試作も本体はもちろん、座面や手すり、実際に触って座って、と試してもらいながら決めていきます。

1年に何度も足をお運び頂けたことで納得のいくデザインを作ることが出来ました。

そしていよいよ制作に取り掛かりです。
しっかり寝かせた桜材は色合いも良く、どんどん良材の入手が困難になっている昨今では本当に良いもので作ることが出来ました。

座面も牛革の本革で一頭分、二頭分、と裁断されていない革を仕入れてもらって専門の職人さんに作ってもらいました。

工房で組み立てたところです。



さて完成されたものはそのままの形でお送りするのではなく、今回はノックダウン式でI様に最後の組み立てをして頂くというスタイルで作りました。

段ボールで6箱。
I様のお家に無事に届くかな、迷子の箱なんて出ないかな・・・。
ドキドキとワクワクの中工房を出ていく椅子たちが入った箱を運ばれていくのを見送りました。

そして数日後、I様の元に無事にすべての箱が到着しました。
I様の手によって組み立てられた姿を見て、嬉しいやらホッとするやら、子供を見る親の気持ちさながらです。



I様からもご感想を頂きました。

島田さま

こんにちは。
先週ソファーをお届けいただきました。もうすでに我が家の中心で素敵な存在感で佇んでいます。
息子もとても気に入ったようで、今まではテレビのすぐ前でゲームをしていたのが、ソファーに座りたくてテレビから3mくらい離れてゲームをしています。笑

いろいろ要望を聞いていただいて本当に感謝しています。
振り返ると、4~5年前だったか、お電話でソファー製作のご依頼をさせてもらったのが最初だったと思います。
とても親切にいろいろご案内をいただいたことをよく覚えています。
ここまでの時間は本当にあっという間だったと感じています。

工房にも何度も訪問させてもらって、ソファーの話はそっちのけ?で、家具の話や北欧の話、あとは大好きな木の話をたくさんさせてもらいました。
一旦ここまでのところを感謝したくメールさせてもらいました。
まだまだ春は先ですが、風邪などひかれぬようにしてお過ごしください。」

ソファに座りたくて、という息子様の姿を思い浮かべてついこちらも笑みがこぼれてしまいます。
長くI様のお家でご家族の皆様に囲まれて過ごすソファを幸せに感じます。

本当に良いお仕事をさせて頂きました。
心からの感謝を胸に、これからも木と向き合いたいと思います。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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