さて、「蓮ーHASU-」の制作レポートの2回目です。
いよいよ本格的に象嵌作業に入りました。サペリを使ってベースになる部分をつくり、ここに一つずつ蓮の花と葉、つぼみ、種などを嵌めこんでいきます。
と、恐れていたことが発覚します!
調子よく嵌めていた葉の色合いが、遠くから見たときにあまり引き立たないことがわかりました。
これは時々あることなのですが、作業しながら近くで見ているのと、壁などに立てかけて遠くから見た時だと、印象が全く違ってしまうのです。一応それも計算しながら配色しているのに、自分の頭で思い描いていたものと実際のイメージが違っていると、もう落ち着かなくなってしまい、手が止まります。
じっくり眺めて、いろいろ考えた末に、すべてやり直すことにしました。
時間もない中で、自分なりに苦渋の結論でしたが、出来上がった時の自分の気持ちを考えると、やはり気になることに後ろを向いては作業し続けられないことに、プロのプライドを賭けました。
切り抜き、嵌めては、マスキングテープで仮止めしていきます。テープが邪魔してよく見えませんが、この状態になると立てかけて見たり、持ち運びもできるようになりますし、止めているのでずれたり、飛んでピースがなくなるということがありません。
それに、こうして止めておけることで、小さいものだと家に持ち帰って作業を続けることも可能です。
マスキングテープというものがなかった時代は、どれほど大変だったことだろうかな・・・とついつい昔の象嵌に思いを馳せます。偶然に粘着の弱いボンドができたことで商品化に至ったというマスキングテープ、これがない象嵌なんてもう考えられません。大げさかな(笑)。
今回のように大きいもの(幅60cm高さ180cm)だと作品自体を廻すこともままならないので、自分が作業台の周りをくるくると回ること数十回。「絵」になってきたところを見て、また立てかけてチェックです。何とか配色の組み合わせも良いようなので、このまま2枚一気に象嵌作業を続けることにしました。
終わってみれば2枚合わせて10日ほどで完成でした。と言っても、さいごの4日間は工房に泊まり込んでの作業でした。
これで、何とか間に合うーーーと、やっと一息ついてプレス機に。
投稿者プロフィール
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1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。
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