黒い森美術館

黒い森美術館

先週黒い森美術館での展示会を無事終えることができました。
森の中の小さな美術館。だれもいない時間には、風にそよぐ葉の音、鳥の鳴き声、そんな自然のシンフォニーを聞きながらぼんやりする時間も持てました。
雨の日には、なんとなく怖くなるくらいの暗さになり、「森」の持つ力のようなものさえ感じました。
「木」を使うものにとって、その集合体である「森」の息吹のようなものを強く受け止めた数日間、作業に追われながらの展示会ではあったのに、終わった時ふと体が軽くなるのを自分でも感じています。

 

 

黒い森美術館展示風景

黒い森美術館展示風景

今回は今年作った作品の中でも自分の気に入ったものを、小さなサイズで製作したものだけを展示しました。

ベンチも作品です。座面にパッチワーク風の象嵌を施しています。裏まで手を抜かず、両面に象嵌しました。
何脚か作ってきたベンチですが、ここに座って作品を見てもらうというのはちょっとした贅沢のような気がして、気に入っています。

象嵌ベンチ

象嵌ベンチ

ベンチのアップです。
縦、横、と同じ模様をつなげています。素材はウォルナットです。すぐに売れてしまって手元に残りませんが、自宅にも欲しいと思っている一脚です。できれば揃いのテーブル、椅子、とシリーズで作ってみたいと考えています。

 

木象嵌 蓮 

木象嵌 蓮

今回一番人気があったのは、夏に作った「蓮」の小サイズバージョンでした。
これを見に、2度も訪れて下さった画家の方がいらっしゃり、「絵を描くとしたら、どうしても水の波紋なんかを入れたくなるもんだが、これは余計なものがなくていい。」とおっしゃっていました。
絵心がある方にしげしげとご覧いただくと、なんだか照れくさい気もしましたが、みなさんに「いい、いい」と言ってもらえると、やはり嬉しいものです。
ありがとうございます。
この作品のことが、自分でももっと好きになりました。さらにサイズ違いの製作も始めています。

 

自分でも何かに押されるように、今年はずっと象嵌を作っている気がします。
「藝」という字が、「げい」と読むほかに「わざ」とも読むのだ、ということを教えて下さったのは、フラノ寶亭留の支配人でした。自分の中でもつれていた糸が一本に伸びたような、そんな気がする一言でした。

30年近く木工を続けて来て、木工の「技術」を身に着けるべく、木の仕事には何でも首を突っ込んで来ました。
わからない、知らない、と言いたくない、そんな自分の性格もありましたが、何よりやっていて「楽しい」ことが多かったからです。でもここ数年、大概のものは作れるという自信ができた反面、本当に自分のやりたかったことは何なのか、忘れていたような気もしていました。そして振り返ることもなく慌ただしく毎日を過ごしてきて、そのことに目をつぶっている自分がいました。

「技」を「藝(わざ)」に。

自分が木工を志した時の新鮮な気持ちをこの一言に込めて、これからの「木工家」として歩いていく自分が進むべき方向を「木象嵌」に定めて行こうと思います。

こんなことを言葉にできるような「想い」をくれた、黒い森に感謝しています。

展示会においで頂いた皆様に、心からの感謝をこの場を借りて申し上げます。

今日から、また新たな気持ちで「木」とつきあっていきたいと思います。

 

投稿者プロフィール

Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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