2018年7月8日。
この日、花嫁になった方がいらっしゃいます。
三姉妹の長女としてお生まれになり、真っ直ぐでしっかりとした性格の持ち主の、美しい方です。
この日をどんなにか楽しみにしていらっしゃり、何を贈ろうか、どうしようか・・・、と娘の幸せを一心に願うお母さま。
そしてこのお母さまの想いを「小箱」にしてお作りさせて頂いた、私たちの幸せな体験を今日は綴りたいと思います。

「桜の小箱」

H様から初めてご連絡を頂いたのは、2018年3月の事でした。
まだ雪が残る当別に、春間近の静岡から、ホームページのお問い合わせフォームでメールして頂いたH様。

「プロポーズボックスを拝見させていただき(ネットにて)結婚する娘にプレゼントしたいと思いメールさせていただきました。
この箱は特注となるのでしょうか?
すぐに買えるものではないのでしょうか?
ネットで拝見させていただいたプロポーズボックスでおいくら位しますか?」

嫁がれる娘様に、「何か記念に残り、そして良い贈り物をしたい・・・。」
そんなお母さまの溢れる想いが短い文章の中に詰まっていました。

すぐに「申し訳ないな。」と思いました。
自分のホームページでは、ご質問頂いた内容がすぐにはわからないのだな、と反省です。
これは直していかなければ、と思いながら、ご質問頂いた内容にお答えしながらご返信申し上げました。

すぐにH様からもご連絡がありました。
インターネットで何かをご注文されることが初めてだとおっしゃいました。
いろいろご不安に思われたり、迷われたりするお気持ちがあったと思います。

それでもこちらからの返信にご安堵頂き、ご注文をお決め頂いたことは、私たちにとっても本当に嬉しくありがたいことでした。

「金額もするものなので、そのためかなり悩みましたが、お祝い金としてあげるよりそちらを減らしてでも残り繋げるものの方が良いと判断しました。」

そうおっしゃって頂けたこと、本当に心の中がジンと熱くなるほど嬉しかったのです。
誰かの想いを、自分の手でカタチに変えて想いを込める、それは本当に幸せで嬉しい作業です。
大切に作りたい。
結婚式の日、溢れる笑顔とこの小箱がH様母娘の絆を深めることができるように・・・。
心からそう思い、決意したのでした。

 

スケジュールの関係で、小箱をお届けできるのは娘様のご結婚式にぎりぎり間に合うかどうか・・・という予定でした。
今までに作っていた小箱のデザインから同じものをお選び頂ければ、下絵のデザインにかかる時間が短縮されるためもう少し早くお届けも可能になります。
けれどせっかくの一生に一度の大切な贈り物です。
何かご希望がないか、好きな花などがもしあれば、何とか結婚式に間に合うよう下絵のデザインも頑張りたいと思いました。

H様はお仕事をされている関係で、返信のメールはいつも夜遅い時間に送って頂いているようでした。
お疲れの時間だと思いますが、ご返信はいつも本当にご丁寧で、H様の想いがとてもよく伝わってきました。

「実は父親を亡くしましてその父親が嬉しそうに写メしていた写真を娘が待ち受けにしておりました。
その写真が桜です。長女は桜にしようと考えておりました。
それこそ長女は桜の時期に産まれましたので。」

そうおっしゃって送って頂いたのがこちらの「お父様が撮られた桜の写真」です。

青空に咲く、美しい八重咲の桜の花。
お父様の想いをいつも感じられるよう、携帯の待ち受け画像にも使っていらっしゃる娘様のお気持ち。
お父様とお母さまの想いがこもる「桜の小箱」に決まった瞬間でした。

さて、H様にはもうお二人の娘様がいらっしゃいます。
そして、親の気持ちは誰も同じで、「みんな同じようにしてあげたい。」という思いでいらっしゃいました。
そこで仮に他のご姉妹の方も将来作らせて頂く事を想定して、三姉妹それぞれの小箱のデザインも考えながら今回の「桜の小箱」のデザインを決めて行く事にしました。

「三人同じにしようかとも思いましたが産まれた月の花の方が三個揃ったときに素敵かなって思ってみたり。
次女も父親の思い入れが強いので桜にしようと思ったりしています。どうでしょう?」

楽しいやり取りが続きました。

とにかくまず「桜の小箱」のデザインから初めて、他のお二人の分はこの後時間をかけてゆっくり決めて行く事になりました。
大きさも、大切なものの代表選手、「母子手帳」が入る大きさをベースとしました。
娘様が産まれた時から、ずっと成長の証としてお母さまが大切にして来られたものです。
何にも勝る宝物だと思いました。

さて、デザインを考えて行きます。
若い方への小箱ですし、「桜」は日本の花で和風になりがちではあるけれど、少し今風にアレンジして、などなど。

いくつか下絵をご提案してみました。

お送りしてH様にご覧頂きました。
そして頂いたご返信には、
「下書きの件ですが  1の案で中央の花のボリュームを下2つくらいとり  左下に持ってきて写真で頂いた桜吹雪というか花びらを右上からを中心にヒラヒラと   写真のように舞わせてもらう感じでできますか?
まとまりがなくなってしまいますか?。
そんな感じにした場合金額をふまえて相談に乗っていただいてもよろしいでしょうか?」

具体的に絵となってご覧頂けると、イメージが掴みやすいので、そこからご自分のご希望もはっきりしてくると言う事がよくあります。
H様もぼんやりして言葉にできなかったイメージが、この2枚の下絵をご覧頂いたことでご自分のイメージを言葉としてこちらにお伝えして頂けたようでした。
そして、その作業こそが一番大切で、モノづくりの「肝」ともいえるかもしれません。

新しく下絵を描き、そしてH様にご覧頂いて、決まったのがこちら。

H様のご意向も入れさせていただき、流れるような桜吹雪と左下に桜の花をアレンジしました。

「インターネットで問い合わせすることは今まで一度もなかったのですが何かの縁なのでしょうか?!
島田さんにお願いすることができ本当に嬉しく思います。
あとは出来上がりをわくわくなぜかドキドキしながら待っております😊」

そんなH様からのメールにこちらも胸が熱くなります。
いよいよ小箱づくりが始まりました。

この小箱は、まず象嵌の絵を作ります。
箱の内部の象嵌も作っておきます。
塗装前なので色は薄いですが、とにかく花の中心部分がなかなかの細かさです。

それを中が空洞の立方体を作って内側、外側にそれぞれ貼り合わせます。
そして二つに切り分けて、蓋と本体にそれぞれ分けたところで、金具をつけ、仕上げと塗装を行い完成します。

言葉にすると簡単そうですが、工程が複雑でかなりの数があります。
特に切り分けるときに失敗でもしたら、すべて一からやり直しです。
緊張の連続ですが、それでも一つ一つ、階段を上っていくかのように「箱」として出来上がっていくところを見るのは気持ちが高まります。
象嵌が入ることで、「普通」の箱ではなく、そこには本当の意味での「特別」感が出てくる気がします。
切った後の縁の部分も仕上げます。

塗装をして丁番、鍵の金物を仕込み、鍵も手で持つ部分を切り落として桜の木で作り替えます。
トレーもできました。

完成がこちら!!

中を開けると・・・
トレーを中に設置します。
後ろ姿まで美しさにこだわった総象嵌仕様です。

塗装が十分乾き、いよいよ当別の工房を「桜の小箱」が静岡に向けて旅立ったのは結婚式の10日前のことでした。
今回も小箱に「頼むぞ!!」と想いを込めて送り出します。

静岡まではおよそ3日~4日の旅路です。
H様から「届きました!」とご連絡を頂いた時にはホッとしました。

「本日(30日)無事に私の手元に届きました。ありがとう(*^^*)ございました。

気持ちばかりがあふれてきてしまい言葉に上手くできませんが、鳥肌がたち 何かスゴくあたたかい気持ちになり なんだろう何の涙なのか上手く説明できませんがあふれ出て来てしまいました。

本当に島田さんにお願いして良かったしメールのやり取りも本当に島田さんで良かったってそんな気持ちです。

私はひとめぼれをし連絡までさせて頂きましたが実は少し不安もありました。

果たして今時の若い子が喜んでくれるだろうか。

私の自己満足ではなかろうかと悩んだ時もありましたが そんな事全部ふっとんでしまいました。

絶対に喜んで貰える自信しかありません。

あげてしまうのが少し惜しくなりましたが(笑)今から渡すための準備に入ろうと思います。

本当にありがとうございました。

しつこくて申し訳ないですが娘に渡した後もう一度連絡させて下さい~。

暑かったり寒かったりで大変だと思いますがお身体を大切になさって下さい。」

H様のお言葉に本当にありがたく感動してしまいました。
想いが届いた、そんな感じです。
ご結婚式のご報告、落ち着かれた頃にぜひお聞きしたいなと思います。

今日もまた、誰かに心から喜んでもらえるような仕事をさせて頂けて、本当によかったと心から胸をなでおろしています。

そして、明日からはまた次の仕事に、お待たせしている方のために、一から頑張ろうと思います。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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