「島田さん、私がお願いした全てを叶えて下さって本当にありがとうございました(╹◡╹)
残りの人生を私と毎日一緒に過ごしてくれる大切な相棒です❣❣大事に致します❣❣」
Mより。

そのメッセージと一緒に送られてきたテーブルの写真です。

今からおよそ14年前、私が工房を始めてまだ間もない頃に札幌市内にあるギャラリーでグループ展に参加していました。
そこに一人の女性が展示会をご覧になりに来て、私の家具を見てすぐに「家を建て直すので、新しい家の家具を一式作ってください。」と依頼を受けたのです。
まだ私の工房も出港したての船のように、大きな期待と不安を背に大海に向けてゆっくりと漕ぎ出した頃のこと。
「家の家具、一式」とおっしゃられて、とても嬉しく、そして自分の力でできる事かどうか、と当惑したことを覚えています。

その方M様は、当時お年を召したお母さまとのお二人暮しで、まだ壊す前の古い家にお邪魔してお話を伺いました。
亡くなられたお父様のお話、3人で行った旅行のお話、お父様がご旅行で買われたお土産の数々。
思い出の数々が刻まれて、そして長い間親子3人の暮らしを見守ってきた家と家具、思い出の品々。
そんな生活を一新するのには、お母様の年齢を考えてバリアフリーの家にしたい、見守りをしやすい環境を整えたい、というM様の強い想いがあったからのようでした。

多くのものを処分して、新しい家には最低限のものを持参したい。

そう思う反面、お父様が愛用されていた「碁盤」や「将棋盤」、お母様がお使いだった「裁ち台」など、やはりそのまま捨てるには偲びないものも多くありました。

そして仕切りの無い大きな大きなワンルームのような新しい平屋のお家では、すべてがオープンに見えるため、「お仏壇」はどこに置くのか、寝室とリビングはどう仕切るのか、オープンスペースでの仕事コーナーにはどんなものが必要なのか・・・。

家を建て直すと決めてからもM様の心の中には「どうしたらいいか・・・?」ということが頭いっぱいに広がっていたそうです。

家の設計は親戚の紹介で、札幌はもとより全国でも建築を手掛けている有名な大学の教授の建築事務所で、担当してくれたのは事務所に入って数年の若手建築家だったそうです。

当時は確かにまだ「家具のリフォーム」を専門に行っている業者さんはほとんどいない時代でした。
ようやくテレビで「ビフォーアフター」が人気を博し始めた頃で、「家具のリフォーム全国大会」のような番組も物珍しい番組としてちらほらと放送されているくらいでした。
私自身も興味本位でそんな番組を見ることはありましたが、出来上がったものにピン!とくるものはほとんどなく、取って付けたような「リフォーム家具」に疑問を持っていました。

ですので、M邸の設計を任された若手の建築家にしても、「家」そのものを設計することは可能であっても、手元にある古い家具、道具類をどうやって新しい空間に落とし込むのか、どうしたらいいのか、M様はちらりほらりと相談していたそうですが、結局そのことについては触れないまま家はどんどん建てられていったようでした。

「お仏壇をそっくりいれられるようなキャビネットを作ってもらおう。」
「それがリビングと寝室の仕切りの役割を果たしてくれたら・・・」
「将棋盤や碁盤はコーヒーテーブルみたいにしたらいいかもしれない・・・」

もともとアイデアを出すのがお上手で、ご自分でも椅子の張替えを行うほどの行動力もおありのM様です。
「こんなアイデアを実際に「カタチ」に変えてくれる人を探せばいいんだ!」
そんなことを考えて読んでいた新聞に、私のグループ展の記事が載っていてすぐにギャラリーに赴いてきたのでした。

「縁」
いつも思いますが、人と人のつながりは、偶然なのか必然なのか。
けれどこのタイミングで私とM様は初めてお会いして、それから今日までの長いお付き合いとなったわけですから、やはり偶然だけではない必然の力があったような気がします。

限られた時間でしたが、年末のお引越しに合わせてすべてのものをお納めすることになりました。
材はすべて北海道産の「セン」の木です。

新たに製作したのは、
「ダイニングテーブル」
「キッチンキャビネット」

お仏壇を収納しながらリビングスペースと寝室スペースを分ける間仕切りの役割も果たす「仏壇収納キャビネット」

お仏壇が入るとなかなかの迫力で、お仏壇の威厳もそのまま保つことができるところが良いようです。

そして、何とか使いたいとおっしゃっていた「裁ち台」は、お母様が作業を繰り返すことでできてしまった天板のキズも「大切な愛着のしるし」と言う事で、玄関を入ってすぐのオープンスペースに置く「ベンチ」になりました。
裁ち台の天板に新しい脚をつけた低めの高さのベンチは、もう何年も前からそこにいたかのような風情で納まりました。

碁盤と将棋盤にはトレーをぴったりの大きさに作って、それを上からかぶせることで簡易コーヒーテーブルを2台作りました。
トレーを持ち上げれば、碁も将棋もすぐに始められます。

裁ち台のベンチは碁を打ったり、将棋を指したり、そしてそこでコーヒーを飲めるようにとの想いで高さを低めに作ったのですが、後々このベンチは学校帰りに囲碁を教わりに来る子供たちの指定席になったそうです。

この他にも自分以外の人の目にはほとんどつかないであろう書斎スペースで使う「本棚とデスクの一体型家具」も納めました。

そして「ソファテーブル」もご依頼されたのですが、当時まだまだ使えるソファテーブルをお持ちでいらっしゃったM様は、「もったいないわよね。でも引き出しがついていなくて不便にも思っていて。迷っているのよね。」とおっしゃっていました。

そこで、少しキズが目立っていた天板だけをセンの無垢材に取り替え、脚はお持ちのテーブルのものを再利用してはどうかと提案しました。
生活をして行く中で、ベストな高さ、どれくらいの大きさの引き出しが必要かなど、だんだんはっきりしてくるだろうと思っていました。
それが決まってから作り替えれば、より自分の希望に叶う世界に一つだけの「ソファテーブル」になるのではないかと。

M様もその提案を受けて下さり、2、3年したらまた脚を作り替えて欲しいとおっしゃっいました。

当時はスマホなどなくて、作って納めるのに精いっぱいだったため上の2点以外の写真がなくて残念です。

お納めしてからもお付き合いはずっと続き、そして昨年になり、「ソファテーブルを思い切って楕円に変えたいの・・・。」とご連絡を頂いたのは、初めて家具を納品してから13年経ってからの事でした。
四角い天板の角が歩いていると足に当たって痛い思いをすることが多くなったそうなのです。

お宅にお邪魔するのは数年ぶりでしたが、お手入れの行き届いたお庭は変わらず、M様の優しい微笑みもそのままでした。
お納めした家具類も本当に綺麗なままで、大切に使って頂いたことがよくわかります。
本当に良いお客様に使って頂いて、家具たちも幸せだなと心から思い、感謝の気持ちでいっぱいでした。

さて、肝心のソファテーブルですが、お話を伺うと天板の角を丸くするだけではなく、正座して書道をしたいので座って足がテーブルの下に入るような高さにし、引き出しをつけて半紙やリモコンなど日々使うものも収納したいというご希望でした。

寸法を測り、工房に持ち帰って数週間。
完成したものがこちらです。

お仏壇収納キャビネットと・・・。

これからM様の元で毎日使ってもらえるこの「ソファテーブル」が、いつまでもM様と共に幸せでありますように。
今日も良い仕事をさせて頂き、心からの感謝を込めて。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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