札幌市内。とあるマンションの一室。

今日はこんな素敵なお住いをご紹介しながら、私が納めたコーヒーテーブルの話です。

T様は札幌のマンションをリノベーションされてお住いになっていらっしゃいます。
お付き合いはもう10年ほど前からになるでしょうか?
もともとT様のお父様の家の椅子を作らせて頂いたことがお付き合いのきっかけでした。

私が家具を作っていることは十分ご存じでいらっしゃったのですが、今回頂いたお話は「象嵌の入ったコーヒーテーブルを作って欲しい。」というご依頼でした。
実はT様はお仕事の関係でしばらく札幌を離れていらっしゃったのが、再び札幌に戻られたことをきっかけに終の棲家としてマンションをご購入され、最近リノベーションされたとのことでした。

今年の春のある日曜日、工房に遊びに来て頂いたT様にそんなお話をお聞きしていたところ、工房に飾っていた木象嵌をご覧になって、「この象嵌を入れたテーブルなら、うちに合うんじゃない?」と奥様がおっしゃりました。
それは私がスウェーデンから戻ってきてすぐに作った木象嵌作品で、私の中でもちょっとお気に入りのデザイン、特別な一枚でした。

MASU 2 W605 H605mm

 

「何とか好きなテーブルがないか、随分と探したのだけれど、これ!とピンとくるものがなくて。
そうしたら急に島田さんのことを思い出してね。あ、当別に行ってみようか?ってなったんですよ。」とT様の奥様。

「いいね、いいね。」とトントン拍子に話が決まり、早速ご自宅に打ち合わせにお伺いすることになったのでした。

お伺いしたご自宅は、北欧アンティークの家具とモダンなキッチン、ポール・ヘニングセンの照明が馴染んだものすごく素敵な空間。
「ここに住みたい!!」と思ってしまうほど私好みのセレクトで統一されたインテリアでした。

まだ子供が小さい我が家では、この美しさをキープできる日なんて来るはずもないような毎日なので、本当にうらやましく拝見しました。

そして、何よりこの巨匠たちのアンティーク家具に囲まれた空間に、新たに加わる私作のコーヒーテーブルがさりげなく馴染んで、それでいてビシッと存在感があるものにするには・・・。
スウェーデンで学んだ感性、そして日本の技術。
まさに私が続けてきたモノづくりの原点の仕事でした。

「良いものを作るぞ!!」と強く想いながら、当別までの車中はもうテーブルのデザインで頭はいっぱいでした。

さて、実際に作業をして行きます。
まずはサイズと樹種を決めることから始まります。

T様のお住まいは、家具はチークのものが多く、今回リノベーションして新たに作られた造作家具類はナラを主に使って作られていました。
そこで、テーブルは天板をチークで、脚はナラを使ったものにして自然に周囲に馴染むようにしました。

また、テーブルの大きさは、「大体こんな大きさで、こんな高さで・・・」とおっしゃっていたのをベースに、大きさを変えた天板の試作3種類、そして高さも調節できるように厚みの違う板を何枚かお持ちして、できるだけ実際にご希望をイメージして決めて頂けるようにしました。

工房やお店でご覧頂くと、どうしても天井の高さや作業場の雰囲気、お店の雰囲気で、小さく見えたり大きく見えたり、と言う事が多いのです。
それで、札幌市内や近郊であればできる限りこうして実際に近い状態のサンプルをお持ちして、本当に合った大きさ、高さを選んで頂けることが好ましいと思っています。

もちろん道外ではなかなか難しいことなので、そんな時には今お使いの家具類の高さや大きさ、そして間取りなどをお聞きするようにして、私が考える最適な大きさ、高さをご提案するようにしています。

ちなみに、道外の方でもこうした方法でお作りしたものは、皆さんとてもご満足頂いているようで、今まで「思っていたのと違う・・・」というお声は頂いておらず、何より最初の「ヒアリング」が大切なのだな、とつくづくと感じています。

さて、試作を実際にリビングに置いてみたところです。

ベニヤと建材でざっくりと作っている試作ですが、実際に置いてみるとイメージがはっきりして、サイズと樹種もすぐに決定しました。

次は天板の象嵌のデザインです。
工房でご覧頂いた象嵌は、テーブルの大きさに比べるとやや大きめでしたので、そのままでは使えません。
と言って、ただ縮尺してみても、どうもいまいちです。
少し縮尺して、元のイメージは変えなかったバージョン。やはりキュウキュウな感じ。

少し変えて書き直します。
あ、いい感じです。マスの間をすこし空けてみたのです。
これで上手く行きそうです。

そしてコツコツと象嵌を始めて、並行して脚の部材の加工をして行きます。

チークもナラも堅い材料の代表選手。
作業は少しずつ確実に行います。

完成しました!
縁の部分も良い仕上がりです。
木のマス目が、幾何学模様でありながらやさしい雰囲気に仕上がって、ぼんやり眺めていても飽きない自然なイメージは狙い通りです。

T様に納品の日が来ました。
お持ちしてすぐに「いいねー!」とおっしゃって頂けて、私も顔がほころびます。

T様と奥様がここで温かい飲み物を飲みながら、ホッと一息ついて頂けることを心から嬉しく思います。
シンプルで上質な家具と照明に囲まれたこの空間に、象嵌がちょっぴりアクセントになり、とてもいい感じなのです。

今回も良いお仕事をさせて頂き、本当にありがとうございます。
T様の素敵なお宅で、このコーヒーテーブルもゆっくりと時間を重ねていくことを心から願っております。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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