見ているうちに好きになる、ふしぎな妖怪「アマビエ」さま。

緊急事態宣言を受けて工房も閉館させてもらっていた4月と5月。
ようやく6月に入って開館しましたが、来館される方もまばらで、もともと来館者で密になるような工房では無いのですが(笑)、すこし寂しい毎日はこの秋に入っても続いています。

そんな中、頂いていたご注文の象嵌やコンペ用の象嵌作りにいそしんでいましたが、ふとこの「アマビエ」さまを作ってみようかなと思いたち、一日の作業が終わった後、何日かかけて作ってみました。

テレビやネットでも話題になり、御存知の方も多いと思いますが、簡単にアマビエさまを説明しますと、

アマビエさまは、長い髪にくちばし、うろこを持ち3本足をした半人半魚の妖怪で、江戸時代に肥後(熊本県)の海に現れ、「病気が流行したら自分の姿を描いて人々に見せよ」と告げて海中に消えたとされてます。コロナウィルス感染の沈静化を願って注目を浴び、マスコット人形を作ったり、絵を描いたり、多くの人がSNSなどで自分の作品を紹介して一躍流人気者になりました。厚生労働省の感染予防啓発サイトのアイコンとしても活用されています。

江戸時代の瓦版に描かれた「アマビエ」(京都大学附属図書館所蔵)

これは、江戸時代の瓦版で紹介されたアマビエさまの絵

なんとも不思議な妖怪の話ですが、日本らしい、なんともユーモラスな格好が、テレビなどで何度も見ているうちに愛らしくさえ見えてきてしまいました。

思い返せば想像上の生き物(?)を象嵌で作ってみたのは初めてのことでした。
作っていると、何となく「自分もコロナウィルスと闘っているぞ!」という気分になってきて、この象嵌でコロナを退治できるわけではないのに、世の中の人々と同じ気持ちになっているような不思議な感じがして、ちょっと楽しくもありました。

不安の中にいると人は疑心暗鬼になったり攻撃的になったり、自分を守る本能とはいえ、少し悲しい気持ちになります。

色々な人が「同じテーマ」でモノづくりをすると、実際に作っているのは自分一人の作業なのに、作っている人みんなが「仲間」のような一体感があることを知り、私と同じように温かさを感じているのではないかと考えないではいられませんでした。

それは、ささやかなことかもしれませんが、こんな状況の今、とても大切なことのように感じます。

妖怪は日本のオリジナルかもしれませんが、何か世界規模でこんな「同じテーマ」のモノづくりをするともっと楽しいんじゃないか、たくさんの人とこんな気持ちを分かち合えるんじゃないか、そんなことを考えていると少し幸せを感じます。
同じように感じて行動する人が増えてきて、それが大きな輪になったら本当にいいなと思います。

変わってしまったこと、そして変わらない事。
自分の作品に「変わらない」想いを込める大切さを今日も心にとどめ、制作に励もうと思います。

自分の作ったものが誰かの心を温める存在になったり、不安や孤独を和らげることができるとしたらこんな素晴らしいことはありません。
コロナ禍の中で出来上がった作品をお届けできた方が何人かいらっしゃいましたが、その中のお一人に「心が明るくなった」と喜んで頂けた事を本当に嬉しく思い、私の象嵌にもまだまだお役に立てることがあると感じています。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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