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前回、京都「藝文京展」について書きましたが、今日は後日談といいますか、象嵌が繋いでくれた「縁(えん)」について書きたいと思います。

この公募展では、作品の納品が12月23日、そしてその2日後に入賞の知らせを頂きました。

時は、クリスマスが終わり、お正月に向かうまさに年の瀬。
年内納めの仕事でまだまだ四苦八苦していた時に飛び込んできた嬉しいニュースでした。

ところが、担当者の方に「1月6日に授賞式がありますので、ご出席下さい。あ、北海道からでしたか? 難しいでしょうかね?」と言われて、びっくりしました。そんなお正月明け早々にー?

象嵌で賞を頂いたのは今回が初めてだったこともあり、京都に行きたい!!と言う気持ちはあったのですが、時期が時期であることと、その日はすでにスウェーデンから来る知人の来訪を、工房で待たなければならない日でもありました。

迷いました。チケットもまだ高い時期ですし、知人の来訪を翌日に延ばしてもらって日帰りで、などなど頭の中でいろいろと考えてみたのですが、結果はやはり無理、ということでした。

担当者の方に行けない旨の連絡をしたところ、授賞式に参加しないのは私だけのようでした。

「北海道ですからね。」とおっしゃってもらい、幾分楽になりましたが、冬の北海道を少し恨めしく思う気持ちもありました。(笑)

授賞式後の展示会は3週間ほど開催される予定でした。私の象嵌も展示されました。

会場は京都、四条駅近くの京都芸術センターで、調べてみるとなかなか味わいぶかい建物のようです。

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急ぎ展示会のお知らせの葉書を作り、年が明けてから関西方面の知人の方に送りました。工房や、他の展示会でご連絡先をお知らせ頂いた方(関西近郊)にもお送りさせて頂きました。

自分は見ることができなくても、一人の方でもご覧いただければな・・・と思いはしましたが、同じ関西といえどもそれぞれに距離はありますし、冬の京都は寒いですから、足をお運び頂ける方はいらっしゃるかな、と思っていたのでした。

さて、西宮に住んでいらっしゃるYさんは、私のパソコンに関するすべてにおいての師匠のような方ですが、ご連絡をしたところすぐに「家族で見に行きます!」とおっしゃってくださいました。

象嵌はwebや写真でご覧いただいたことはありましたが、実物を見て頂くのは今回が初めてですし、何より私も展示しているところを見てみたいという思いで、「もし行かれたら写真撮ってきてくださーい!」と図々しいお願いをしてしまいました。

実はYさんとはお電話で仕事の話を相談させて頂いていただけで、お会いしたことがありません。
西宮から京都だって、いざ出かければ結構な距離があります。

「気持ち」がなければ、足は動かない。そう思うと、Yさんの温かいお気持ちが嬉しくてジーンとなりました。

そして、二つ返事で写真のことも請け負ってくださり、お休みの日にご家族でお出かけになってくださいました。

1月中旬のある日、Yさんから「蓮の象嵌、見てきましたよ!」と、写真を添付したメールが届きました。送って下さっている時間を見ると、夜の遅い時間になっていました。

早速送ってもらった写真を見ると、会場の最寄りの駅から、まるで私が自分で歩いているかのように順を追って写真を撮って下さり、本来であれば展示会の写真はNGだったにも関わらず、「島田さんにも見せてあげたいんです」と交渉をして下さり、特別に許可をもらってたくさんの写真を撮ってきてくださいました。

本当は撮影NGの写真ですが、もう時効でしょうから、少しだけ公開します!

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Yさんは京都から帰って、夜遅くまでこの写真たちを選んだり、見やすく順番にそろえたりとお気遣い頂いたのだと思います。

本当にありがたいことです。西宮に飛んで行きたいくらい嬉しく思いました。

京都には行けませんでしたが、送ってくださった写真のおかげで心のモヤモヤが薄れていくのがわかりました。
Yさん、本当にありがとうございました。この場を借りてもう一度お礼申し上げます。

さて、あっという間に会期も終わり、1か月ほど経ってから作品も京都から帰ってきました。

どこかでみなさんに報告を、と思いながら日々を過ごしていた3月のある日、今度は工房に一通の葉書が届きました。

滋賀県にお住いのOさんご夫妻からでした。

感想お手紙

Oさんは、一昨年に北海道にご旅行に来られ、宿泊先のフラノ寶亭留で象嵌の展示会をご覧になり、富良野からレンタカーで当別の工房までおいで頂いたことがありました。

「ここに来たらもっとたくさん見ることができるのかな、と思いまして。」とおっしゃって下さったのに、象嵌の作品はほとんどすべて富良野に行ってしまい、ただただお詫びしたことを懐かしく思い出しました。

「ここまで来た思い出に・・・」と私が作った一輪挿しをお買い上げになり、「関西方面で展示会があったら必ず行きますから!」とおっしゃって下さった約束を、今回本当に果たして下さったことをこの葉書きで知ったのでした。

「今度行きます!」と口では簡単に言えますが、実際行動するとなると、これはなかなかできないことだと思います。
予定もあるでしょうし、遠いところだったり、行き難い場所だったりもします。

でも、こうして私のことを覚えていて下さり、たった一枚の象嵌を見に京都まで足を運んでくださったことは、やはりほんとうにありがたいの一言に尽きると思います。

Yさん、そしてOさんご夫妻に、人の優しさ、温かさ、そして想う気持ちの大切さを、今回改めて教えて頂いた気がします。
これこそが「縁」なのだと思います。大切にしていきたい大事なものです。

自分の作っている木象嵌が、こうして自分と他の人たちを繋いでくれている。そう思うと時にはくじけそうな作業が続く時でも、がんばろうという励ましがどこかから聞こえてくるような気がします。

これからも「良い仕事」をするように心がけ、木象嵌の技にもいっそう磨きをかけていきたいと思います。

投稿者プロフィール

Akio Shimada

1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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