私が工房を構えている当別町は、スウェーデンのレクサンド市と姉妹都市提携をしています。
その関係もあり、スウェーデンからはよく視察団だったり、交換留学生が来ています。
留学生はレクサンドにある工芸高校の学生で、音威子府高校や帯広の企業、そしてここスウェーデン交流センターの木工房で研修を行っています。
その関係で、昨日高校の校長先生と、担当教諭が視察に工房を訪れてくれました。
マルクスはこれが2回目の工房来訪になります。学生がいかに有意義な時間を過ごせるか、どんなプログラムをこなすのか事前のリサーチと話し合いのために来ています。
もうかれこれ、5,6年にはなるのでしょうか? 毎年2名の学生が私の工房で研修をしていきました。
私自身もスウェーデンで学び、スウェーデンの国家認定資格である「スウェーデン家具マイスター」でありますし、そういったことを踏まえて、日本らしい、日本でしか学べないプログラムを、という依頼ではあるのですが・・・。
実際来た学生の子に聞いてみると、「あっちでは日本の道具のレクチャーをされたよ」「こっちでは、箸(はし)を作ってきたよ」と、もう結構、いわゆる日本らしいことはびっちりやってきている様子。
毎年、少し疲れが出ている頃に当別に来るスケジュールになっているので、のんびり自分のペースで、スウェーデン流(自分のペースで休憩できるよう、ジュースとお菓子のコーナーを作ったり、CDで音楽を聴いたりしながらするのがスウェーデン流)にできることを提案して、学生たちと製作するものを相談しました。
その一つが、象嵌です。
象嵌は、日本でもそうですが、言ってみれば長い年月をかけて培われた「伝統工芸」の一つです。
スウェーデンでも、継承者の減少や、若い人の興味の対象が薄いという理由で、最近は学校でもあまり教えなくなっているとのことでした。
そこで、敢えてこの日本、当別の地で、象嵌の勉強をしてもらうことにしていました。
学生たちは、それぞれに個性のある象嵌を作っていて、毎年教える側としても楽しみの一つでした。
最初「えー?!」と言っていた子も、作った作品を大事にスウェーデンまで持って帰ってゆきました。
日本らしいか?と言われれば、ダースべーダーの象嵌だったり、モザイク模様だったり、全然日本らしい作品を作っている子はいなかったのですが、自由にできる、やってみると言う事のその向こうに、「らしさ」が加わればいいかな、と私は思っていたため、作るものを限定していませんでした。
そんなこんなで、今回の先生たちの訪問では、ひょっとして「もっと日本らしさのあることをさせて欲しい」なんて言われるかな・・と内心モジモジしながらいたのですが、校長先生の口から出た言葉は意外なものでした。
「あなたのところで象嵌にトライした生徒から、もっと象嵌を学校でも教えて欲しいと言われて、最近きちんとしたクラスを作って勉強できるように整えたのよ!」
なんだ、そうだったのかー。とホッとして、「象嵌見ます?」と作品を二人の前に出したのでした。
もちろん、手元にある作品の中では一番〝日本っぽい”ものにしました。そこは、やっぱり何となく・・・。
自分がスウェーデンで学んだ技が、今度は日本からスウェーデンに持ち帰られて、学生達の興味の対象になっていることをとても嬉しく思いました。
そしてこちらの想いが通じているのかいないのか、なかなか素直に表現してくれないティーンエイジャー達(どこの国の子たちもみんな一緒ですね)が、実際には感じてくれるものがあり、ここでの時間が決して無駄にはなっていなかったことを改めて知ることができ、正直ホッとする思いでした。
上の写真は一昨年に来た二人組。
右の学生は、日本が相当気に入ったらしく、今年の後半、もしくは来年に旭川の家具会社にインターンとして来るそうです。
彼はラッキーにも特例で2回交換留学生としてやって来たのですが、「日本にこのままいてもいい!!」を連発していました。
嬉しいことです。
そしてこんなプレゼントも先生に持たせてくれていました。
学校のプログラムで、企業とコラボレートして作ったという、曲木の携帯スタンドです。
「覚えていてくれてたんだな~」と感慨深げにいう僕に、先生たちは笑いながら「うんうん」とうなづいてくれました。
象嵌が遠いスウェーデンと当別の工房を結んでいる、そんなことを考え、ここでも「縁」を感じたのでした。
まじめな会合を終えて、先生達に「明日のスケジュールは?」と聞いてみました。
二人はニヤッと笑い、「ニッカ!!」と一言。
そう、スウェーデン人は老若男女、ウィスキー好きが多い国なのです。
「それは今度来る学生には内緒にしておくよ!」と私が言うと、二人はウィンクして去っていきました。
今年もまた10月に来る留学生が、少し待ち遠しくなりました。
最後にこの写真を。
彼は、今まで来た中で一番のノッポさん。3年前に来た学生で、当時の我が家の息子たちとの一枚です。
左から身長、2m、1m、1m20cm。すごい背比べになりました。
いい写真です!
投稿者プロフィール
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1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。
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