家を新築したとき、家族みんながワクワクした思いで引っ越したこと、そんな思い出はありますか?

1816599576_6cddc80c88_z

札幌にお住まいのN様は、ご夫婦ともに道外のご出身でしたが、転勤で偶然住むことになった札幌がすっかり気に入って、この地に家を建てられたのは15年前のこと。

緑の多い山の手の土地に、家族の想いがつまった大切な「我が家」。

その家が、今年15周年を迎えられるのを機にN様がご注文下さった木象嵌のダーラヘストです。

IMG_1074_02_small

今回N様にお願いして、私が作った木象嵌の感想をお聞きした際、作品に対する想い同様に、私達作り手への想いが綴られていたことに本当に感謝申し上げ、一部をご紹介したいと思います。

築15年目となる今年、「何か記念になるものが欲しいな・・・」とN様がお考えになられていた時、ふと見つけてもらったのが私が作った一枚の木象嵌のポストカードでした。

ダーラヘストを9頭並べたこの木象嵌は、今から3年前の「午年(うまどし)」に合わせて作ったA4サイズの大きさの木象嵌で、おかげさまで可愛さが人気になり、ポストカードも作ることになったのでした。

象嵌 ダーラヘスト

象嵌 ダーラヘスト

ダーラヘストは、スウェーデン語で「ダーラナの馬」と言う意味で、その名の通りスウェーデンのダーラナ地方で作られている馬の置物の総称です。

今ではダーラナに限らず、スウェーデンはもとより、北欧全体のシンボルとしても有名になりました。

2902129881_600ba604c0_z

この馬は、いわゆる「縁起物」と考えられ、家々に幸せをもたらすと言われています。

もともとは、お父さんが長い冬の間、子供たちのおもちゃに、とナイフ一本で削って作った木彫りの馬から始まったそうで、それが色を付けられ、模様が描かれ、おもちゃや、土産物として売られるようになったのが400年前と言いますから、その歴史はかなり古いものです。

でも、考えてみたら「馬」は日本でも縁起物の代表選手ですよね。

神社の「絵馬」は、昔は生きた馬を奉納していたものが、次第に「絵」になって奉納されたことが始まりと言われていますし、「馬」がメインイベントとなっているお祭りは、全国でたくさんあります。

15090542426_90e48f536e_z

「馬に乗って神社の境内に一番乗りする」というお祭りのニュースは、本当によく耳にしますよね。

山形、天童市の「左馬」も有名ですが、これは「馬」と言う字を逆さまに書いている将棋の駒が有名です。

hidariuma

馬を左右逆に書いているのには理由があって、

・人が馬を引くが、、その「馬」が逆になっている為「人を引いてくる」=「商売繁盛」に繋がるとされている。

・馬に右側から乗ると馬がつまずいて転ぶことから、左側から乗る馬=左馬は、人生をつまずくことなく過ごさせてくれる縁起物とされる。

・馬を逆さから読むと「まう」=「舞う」とおめでたい席を連想することから、左馬は「幸福を招く」駒と言われている。

偶然かもしれませんが、ダーラヘストの写真や絵も、左向きに描かれているものがとても多く、「左向きの馬」がスウェーデンでも日本でも、「縁起」を高めると考えられているのかもしれません。

26241551264_1e70fdb5fe_z

 

そしてこれも偶然ながら私が作った木象嵌の馬たちも、やはりみんな左向きになっていました。

特に意識していなかったのですが、「馬=左向き」の構図を自然に描いていたのは、「縁起」を大切にする日本人の心かもしれませんね。

こう考えると、「馬」は日本でも、昔から生活に欠かせない馴染み深い動物であることから、このダーラヘストも単に北欧を連想するだけでなく、「馬」を身近に感じることが人気の秘密なのかもしれませんね。

今のモダンなインテリアにも、昔ながらの「ザ・馬」的な縁起物は取り入れにくいものですが、このダーラヘストなら可愛さと共に、どこか洗練された色合いとデザインが、今のインテリアには取り入れやすいですね。

21364219176_b1681445fd_z

N様はお住まいがスウェーデンハウスであることもあり、置物のダーラヘストは持っていなかったけれど、違う形でこのダーラヘストを築15周年の記念として飾れたら、というイメージが膨らみ、すぐに工房にご相談に見えられたとのことでした。

実際のA4サイズの木象嵌を見てさらにイメージがはっきりし、家のリビングの壁に、これくらいのサイズで、と次第に作る木象嵌が具体的になり、ポストカードを拡大コピーして自分なりの組み合わせも考えていらっしゃいました。

製作風景の写真です。

s-IMG_6089s-IMG_6110

出来上がりまでは、打ち合わせが何度かありましたし、N様ご自身のアイディアが盛り込まれたり、と、時間はかかりましたが、N様のイメージした通り、風合いが深まった愛着ある家の壁に、とても自然に馴染みました。nagaoka web

今までの15年、そしてこれからの歳月。

「家」は家族が帰る場所であり、子供の成長や、家族の喜怒哀楽を見守ってきた、いわば心の「大樹」とも言えますよね。

そんな「家」に感謝を込めて、家族の新しい「象徴 ―シンボルー 」を作るというN様の考えは、とても素敵で素晴らしいと思います。

「小さな作品で、申し訳ないのですが・・・」と遠慮がちにおっしゃってくださるN様でしたが、私は作品の大・小ではなく、その作品に込められている想いこそ、一番大切にしたいと思っています。

「家族愛とものを大事にする心も感じながらこの絵と一緒に暮らしたいと思います。」

最後にしめ括られた一文を、私はこれからずっと忘れないと思います。

「家族」や「家」を大切にする心が、良い作品作りの糧となることを今回教えて頂いた素晴らしいことと思います。

これからも家族の「つなぎ手」となるような「家」のシンボルとなる作品を、たくさんの家族に作っていけたらなと思います。

 

お問い合わせはこちらから

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

お問い合わせ→こちら

関連記事

  1. ー木象嵌yearー 魅せる作品、作ってます!

    2015.06.17

    ー木象嵌yearー 魅せる作品、作ってます!

    今年も早くも半年が経とうとしていますが、こんなに象嵌作りに追われている年も珍しいかもしれません。…

    ー木象嵌yearー 魅せる作品、作ってます!
  2. 「蓮」製作の続きです

    2015.07.10

    「蓮」製作の続きです

    さて、「蓮ーHASU-」の制作レポートの2回目です。いよいよ本格的に象嵌作業に入りました。サペリ…

    「蓮」製作の続きです
  3. 作品が旅立ちました

    2015.10.21

    作品が旅立ちました

    先日、フラノ寶亭留の展示会をご覧になった方が木象嵌をご注文下さいました。行先は香川県です。…

    作品が旅立ちました
  4. 京都 藝文京展で象嵌が入賞しました!

    2016.05.19

    京都 藝文京展で象嵌が入賞しました!

    少し前のことになってしまいましたが、京都で開催された「藝文京展」という公募展で私の象嵌が入賞(NHK…

    京都 藝文京展で象嵌が入賞しました!
  5. 手作りの時代。|プレゼントは、世界に一つだけのオリジナル

    2016.07.7

    手作りの時代。|プレゼントは、世界に一つだけのオリジナル

    手作りのものが見直されているモノが溢れている今、心から「喜ぶ顔が見たい!」と…

    手作りの時代。|プレゼントは、世界に一つだけのオリジナル
  6. マイスターがつくる象嵌家具の製作、公開します ‐その1‐

    2016.05.25

    マイスターがつくる象嵌家具の製作、公開します ‐その1‐

    先日、札幌市内にお住いのH様のお宅に伺い、象嵌家具製作の3度目の打ち合わせをして来ました。昨…

    マイスターがつくる象嵌家具の製作、公開します ‐その1‐
  7. 象嵌の作り方 ‐ ダーラヘスト ‐

    2016.05.24

    象嵌の作り方 ‐ ダーラヘスト ‐

    今日は私が作っている象嵌の作り方について、ご説明したいと思います。札幌にお住いのN様は、大丸…

    象嵌の作り方 ‐ ダーラヘスト ‐
  8. マイスターがつくる象嵌家具の製作、公開します ‐その2‐

    2016.05.26

    マイスターがつくる象嵌家具の製作、公開します ‐その2‐

    前回のブログの続きです。さて、持ち帰った宿題を一つ一つ洗い出します。特に構造は、今回…

    マイスターがつくる象嵌家具の製作、公開します ‐その2‐
  9. 「木の箱」にこめた想い -プロポーズを巡る箱物語-

    2016.10.4

    「木の箱」にこめた想い -プロポーズを巡る箱物語-

    「プロポーズに使って頂きましたよ!!」「え?!」そして送っていただいた一枚の写真。…

    「木の箱」にこめた想い -プロポーズを巡る箱物語-
PAGE TOP