「ポストカードの在庫、ほとんど無いですよー」
そう連絡をくださったのは、札幌の大通りにあるお店、YUIQさんから。
YUIQさんでは、数年前から私の作品を取り扱って頂いており、今回も追加の納品のご注文を頂いたのですが、昨年の冬以降に扱って頂いているのが、木象嵌のポストカードです。
富良野での展示会で作った、「花」「実」「葉」の作品は、カメラマン 藤倉翼さんにお願いして、それぞれたくさんの写真を撮ってもらっていました。
その写真を使って、何かもっとたくさんの方に木象嵌を見てもらえる機会ができないものか、と思案しているうち、オリジナルのポストカードを作ってみようと思いました。
作ってみると、これがとても好評で、作品をご覧になったことがある、無いに関わらず、先のYUIQさんはもちろん、JR石狩太美駅に隣接するFIKA(フィーカ)さんや、札幌芸術の森工芸館の売店 ベストポケットさんでも追加納品のご連絡を頂いていて、ありがたいことと思っています。
たくさんの方に見て頂きたいという思いはあっても、展示会にお越しいただけるのは限られた人数であるのは仕方のないことです。
気軽に見たり、触れたりできるものを考え、展示する場所を確保していくのは、大切なことだと思っています。
しかし、木象嵌を作るのはすべて手作業なので、とても時間がかかります。
クォリティを保ったまま量産するのは絶対に無理だと思っていました。
そして、木象嵌は、写真に撮るとどうしても作品本来のもつ味わいとは変わってしまうのではないか、とも思っていたのです。
でも、富良野での展示会で、「作品自体は買って持ち帰ることはできないけれど、その雰囲気を、帰って家族に伝えたい」というお客様からの声をお聞きし、それがポストカードを作るきっかけとなったのです。
それぞれの作品は高さが120cmほどあり、すべてをポストカードの中に納めることはできません。
作品のどこの部分をカードにしていくのか、簡単なようで意外に悩む作業に、あれこれと補助の道具を作って悩むこと数回。
「あれこれたくさん見てもらいたい。」、「苦労したところも見てもらいたい。」という作家の立場での勝手な希望と、その象嵌のどこを見てもらうのが一番美しいのか、という憶測から、あれこれ審議した結果、この3枚になりました。
「花」
ルピナスの花弁、そしてダリアの花びら、その一枚一枚をすべて細かいピースで嵌め込んでいきます。
同じウォルナットという材料でも、一枚の材料の中で微妙に色の濃淡があるので、それを活かしきる形で作ってみました。
これくらい拡大しないと、ダリアの花びらが、それぞれ一枚一枚象嵌しているとは気づかれないかもしれませんね。(苦笑)
「実」
これも、ダリア同様に、松ぼっくりの実のごつごつした質感を出すために、細かいピースを連続して用いて象嵌しています。
実だけではなく、葉の美しさも楽しんでもらえる部分を選りすぐりました。
「葉」
「その木の葉を、その木の材で作る」ことにこだわって作った木象嵌です。
朴(ほお)、ナラ、セン、白樺、それぞれの葉を、それぞれの木の材料を用い、その葉の特徴と美しい葉脈までもを表現できるよう尽くした作品です。
ベースの色と相成って、葉の美しさがひときわ目立つのか、「花」「実」に負けず劣らずの人気となっているのは嬉しいことです。
初めは、この3枚だけの販売でしたが、以前に自分用に作って好評だった「ダーラヘスト」のポストカードを追加しました。
「ダーラヘスト」
このポストカードは、「部屋に飾る」とおっしゃって下さったり、「人にあげたい」と、プレゼント用にも買って行かれる方が多いらしく、特にスウェーデン風の駅舎が特徴の、JR石狩太美駅に隣接するFIKA(フィーカ)では一番人気のようです。
木象嵌は、どうしてもすべてが手作業で作っていること、緻密な作業が多いので時間がかかること、などから価格も数万円から数十万円と高価になりがちです。
価格の価値は十分にある、と自負していますが、「お友達にちょっとプレゼント」と言うわけにはいかないかもしれません。
そんな時に、このポストカードは目新しさもあり、木の温かさも感じられるということで、お手紙を書いたり、ちょっとしたプレゼント用に喜ばれているのだと思います。
こんなに好評を博すとは、自分でもちょっと思っていなかったこともあり、新しい柄のものをしばらく作っていませんでしたが、
新たにいくつか作るつもりでいます。
実は、「花」と「実」は、拡大することによって元の象嵌のイメージが全くわからないので、気になっていました。
それで、新しいタイプのものを作って販売を始めることにしました。
「花の新しいもの」
「実の新しいもの」
そして、さらに、ご要望が多い「蓮」のポストカードを作る予定です。
自分用に仕事で作ったタイプがこちらなのですが、新しく藤倉さんに写真を撮ってもらったものがあるので、作るものはさらに良い出来になるはずです。
「蓮・自家用」(こちらは販売しておりません)
木象嵌の作家として、「象嵌ってこんなもの」ともっと知ってもらうための活動をしなくてはといつも思っています。
印刷物は、時として元の象嵌作品とは質感がすっかり変わることもあり、それを恐れていたのも事実です。
でも、こうして多くの皆さんにポストカードを選んでいただけることが、こうした「広める」ことにつながるのかな、と今はワクワクした気持ちでいます。
販売しているお店はこちらです。
道外の方には直接販売もしております。下記「問い合わせはこちらから」をクリックして、問い合わせフォームに「ポストカード希望」と書いてメールを送信してください。担当から折り返しご連絡いたします。
販売価格は、一枚 162円です。(すべての柄で共通価格です。)
ご注文をお待ちしております。
問い合わせはこちらから
投稿者プロフィール
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1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。
お問い合わせ→こちら
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