少し前のことになってしまいましたが、京都で開催された「藝文京展」という公募展で私の象嵌が入賞(NHK京都放送局長賞)することができました。

ブログでご紹介しようと思いながら、遅くなってしまったのですが、昨日主催者の方から「目録」を送っていただき、改めて今回の入賞についていろいろ自分でも感じることがあったので、今日はそのお話をしたいと思います。

目録写真

目録アップ

「藝文京展」は、京都市と公益財団法人京都市芸術文化協会が主催している公募展で、その趣旨は「プロの作家から学生、趣味で続けている方など、キャリアやレベルを限定しない、開かれた公募展」というものです。

毎年異なる分野の作品を対象として開催し、今回は、版画、絵画、写真などを含む平面作品と言う大きな括りで募集をしており、版画でも、絵画でもない、木画(もくが)とも言われることがある木象嵌でも、今回の対象になるのでは、という思いから思い切って(自分では・・・)応募してみることにしました。

「古典的な技法から新しい表現方法までを対象とし、伝統と革新と言う相反する傾向が共存する今の美術シーンから、平面と言う可能性を浮き彫りにすることを目的として『現代の平面~ひかりとかたち~』というテーマを設定し、123点の応募の中から33点による入選作品による展覧会を開催しました。」(目録より)

この33点の中に、何とか入ったという事なのですが、毎年のことながら、木工の仕事は年末に向けて忙しさを増す傾向にあり(他の人はわかりませんが、私はいつも10月くらいから忙しさのレベルがグンっとあがります)、コンペ用の作品が作れるかどうか最後まで悩みながら申し込みをしたのでした。

昨年の12月に作品の応募締め切り、そして選考があり、年末ギリギリに飛び込んできた入賞のニュースは、私にとって大変に嬉しくそして象嵌を認めてもらえた大きな励ましとなりました。

出来上がった作品はこちら。

蓮 web

作品につけた説明文です。

「 木象嵌 「蓮」によせて

陽光を受け、艶やかに咲く「蓮」の花。古代より人々の心を惹きつけてきた美しい佇まいのこの花は、私自身が好きなモチーフの一つです。

私の作品は「木象嵌(もくぞうがん)」という手法を用いて製作しています。これは、木を象(かたど)り、嵌(は)めるという木工芸の一つです。

ベースとなる木を図案の形に切り抜き、そこに違う木をぴったりと嵌め込んでゆく、その繰り返しによって一枚の絵に仕立てています。

今回製作した「蓮」は、水面を覆う大きな葉の間から、細い花茎を立ち上げて凛と咲く大輪の花をイメージしています。
その見事な花と葉の、陽の光に変容する色模様を、自然の木の色、木目と言った「木」と言う素材が本来持っている魅力を最大限に生かしながら表現してみました。

角度を変えて見ることで、木の色と木目が微妙なコントラストを作り出し、幾重にも変わっていく様子を楽しんで頂ければと思います。

「木」は人にとって最も身近な素材の一つであり、この「木」にしかできない表現を探求することが、私の製作活動の原動力となっています。自然の持つ美しさを表現できるよう今後も作品作りに励みたいと思います。」
昨年はこの「蓮」をモチーフにした象嵌作品を何度も作ったのですが、私自身がこのモチーフが好きなことももちろん、実は展示会や展示した先々でとても反響があったこともあり、今回の公募展でもこの「蓮」を作品にすることに決めたのでした。

他の「蓮」はブログでも何度かご紹介したわけですが、どれも同じに見えて実はすべて絵の大きさ、デザインが違っています。
今回も、サイズに規定がありましたので、まったく新しいものを作る必要がありました。

サイズを変えると、簡単にバランスが変わるため、そのサイズに合った下絵が必要になるわけです。この作業が思っている以上に大変で、すでにイメージが出来上がっている分、細部の構成がなかなか大変でした。

さて、この公募展の最大の特徴は、その審査方法にあったようなのですが、今回目録を読むことで、どのように審査が行われ、そしてその結果としてどういったものが選ばれたのか、とてもよくわかりそして感慨深く思いました。

審査員の方は5名いらっしゃいました。どの方も、その方面では非常にご活躍が著しい方ばかりです。

上村淳之(日本画家、京都市立芸術大学名誉教授、日本芸術院会員)
木村秀樹(画家、版画家、京都市立芸術大学名誉教授)
児玉靖枝(画家、宝塚大学教授)
建畠哲 (美術評論家、多摩美術大学長、京都芸術センター館長)
やなぎみわ(演出家、美術作家、京都造形芸術大学教授)

「それぞれの専門分野の審査員が、ジャンルを問わず作品を同列の次元で評価する」と言う審査方法は、作品を応募した方の、年齢や経歴などを一切考慮に入れず、「先入観のない目で作品を見て、作品それ自体が持つ強さと、そこから垣間見える作家の足跡から入選作品が導き出されていた。」

これは応募する側としては、とても意味のあることなのです。
残念ながら、数ある公募展の中には、派閥であったり、どこかに所属していなければ入賞できない仕組みになっているものも多数あるからです。

作る側として、年齢や所属など関係なく、公平に作品を審査してもらえること。このことは、非常に意味のある大切なことであり、感謝に値することだと思います。そして、教える側に立つことがある人間としても、これからモノづくりをする学生に伝えて行きたいことだと強く感じました。

最後に、審査員の一人、上村淳之さんからの講評をご紹介します。

「 ただひたすら己の持つ技術を使って夢想の世界を表現しようとしたのであろう。匠は少しでも美しく愛されるものを造りたいとの思いで工房に座る。結果、その作品の中に芸術の香りが生まれる。

今日、若者たちは大声をあげて芸術家を主張するが、芸術とはそんな簡単に生まれるものではあるまい。真摯な取り組みの中で生み出されてゆくものではなかろうか。

技を磨き、想いを深めて精進されることを望みたい。衝動では物は生まれない。蓄積の結果としてものが創られ、作家の個性が表れるものであろう。研鑽を積みひたすらな気持ちを持続していってほしい。」

今後も精進したいと気が引き締まる思いと、象嵌を志してきた長い月日が今ようやく実って来たのだと、目頭が熱くなる想いになりました。

大きな紙に書き写し、工房の目につく場所に飾って心の糧にしたいと思います。

お問い合わせはこちらから

 

 

 

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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