前回のブログの続きです。

さて、持ち帰った宿題を一つ一つ洗い出します。

特に構造は、今回の家具の大きさから言っても非常に慎重に考えなければ、安全面や機能面に大きく影響します。

使う材料の厚みや、それぞれの部材の留め方をどうするか。それによって生じる金具の選択肢も変わるので、金物のカタログに付箋を貼りながら、対応しているものを頭に入れていきます。

大体の答えが出たところで、3回目の打ち合わせの時に、お互いが理解しあえるよう、実物大の大きさをクラフト紙に書いてお持ちすることにしました。

サイズは高さが2m20cm越え、幅は1mちょっとあります。壁に貼ってみるとこんな感じです。

クラフト6

工房は天井の高い建物ですが、それでもこの通りです。

分かりにくいですが、右下にぼんやりと犬のシルエットも描いてみました。

こうして実物大のものを用意すると、こちらもその大きさに「むむむ」と唸ってしまいます。

家具を作るうえで、もう一つ大切なこと。それは、どのように家の中に運び入れるのか、ということです。

これが案外とても大切で、作って、できて、持っていったら、家のドアからは入らない、なんてことはよく耳にすることがあります。家に入るまでのシュミレーションは必ずしなくてはならないことの一つです。
マンションの場合にはエレベーターの寸法も大事になってきます。

ベランダの窓を外す、マンションだとクレーンで吊る、もしくは非常階段で9階まで運び上げた、というようなことも本当に結構ある話です。窓を外すくらいで済めばまだしも、非常階段の途中で家具を落下させてしまい、もう一度すべて作り直したという話も知人の経験で聞いたことがあります。

ですので、今回は分割して家の中に運び入れ、現場で組み立てを行うように家具の構造も考えています。

そして、象嵌のデザインも、こうして実際の大きさの中で決めて行かないと、どうしてもミクロ的な見方で考えてしまいがちになるので上手くいきません。

実際にこの象嵌のデザイン画を描くときには、工房で一番多きな作業台の上で作業しています。

作業台のサイズはシハチと言われる大きさですから、ざっくりと1m20cm×2m40cmほどの大きさです。

それでもはみ出していますが、その作業台の上に靴を脱いで上がり、鉛筆と消しゴムを持ちながらどんどん書いていきます。

H様クラフト2

 

「ブ」と書いているのは、ブドウが書かれる予定のところです。それ以外は、葉っぱの予定ですが、モリモリ過ぎてもくどいですし、と言って少なければ物足りなくなりますので、バランスを見ながら作業をしていきます。

ブドウの絵を書くときに、せっかくなのでワインの原料になっているブドウを調べて書いてみるのもおもしろいかな、と思い少し調べてみることにしました。

ワイン用のブドウの品種は赤ワイン用と、白ワイン用で分かれていますが、赤で30種類前後、白で18種類ほどあります。

ワインに詳しくない私でも、カベルネ・ソービニョンやピノ・ノワールなどは聞いたことがある種類です。

中にはテンプラニーリョ(天ぷら?)とか、別名ヘラクレスの血とも呼ばれるアギオルギティコというような、聞いたこともないような品種もたくさんあって、おもしろいのです。

ちなみに、日本固有の品種も一つだけありました。甲州という白ワイン用のブドウです。

しかしながら、非常に残念なことに、このようなワイン用のブドウはとにかく収穫量が大事なようで、どの写真を見ても、ものすごくたわわに実ったブドウばかりで、あまりにたわわに実っているものは、はっきり言って象嵌の原画となるような「絵」にはNGであるため、写真のままの状態では使えません。

10680171853_b9dec3e928_b

そこで、ブドウの粒を間引いたり、自分なりに形を整えたブドウの絵を書くことにしました。

まずは例として小さめのものを一つだけ。

H様クラフト3

イメージなので、まだ具体的な線では書きませんが、棚の上段から続く模様にすること、そして正面と側面の絵もつながるようにしなくてはならないので、ブドウのなる木と枝は何となくでも大体の位置は決めてしまいます。

象嵌は、当たり前のことですが、実際に嵌め込んでゆく作業こそ、一番大変なことではありますが、そこに行き着くまでのこうした地道な作業は必要不可欠であり、0から作り込んでゆくことはとても時間のかかることでもあります。

もう一度壁に貼って見ます。

1H様 クラフト下絵

ブドウが入ると、「らしさ」が増して、イメージしやすくなりました。

左と右の絵のつながりや、全体のデザインの構成を遠くから、そして近くから何度となく確認し、修正箇所には鉛筆で印をつけておきます。

まだ本番のその前の前くらいの段階なので、修正もすぐにはいれず、H様との打ち合わせ後にすることにしました。

絵はこんな感じです。

クラフト5

いざH様の元で、この絵を広げてみました。

大きさに驚かれるH様と、奥様。そうなんですよね。頭の中で考えるのと、実際の大きさって本当に違うものなんですよね。

とりあえず打ち合わせでは、このイメージ画でH様からのOKが出ましたので、とにかくこの絵の続きをまずは完成させることにしました。

「あとは、すべてお任せします!」そうおっしゃっていただきましたので、責任は重大です。

ホッとして、そしてさらにメラメラと燃える「やる気」が出たところで工房に戻りました。

この後、すぐにこの象嵌の下絵の続きです!!

 

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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