「ステータスを上げる」

とは、よく使われる言葉ですが、「ステータス」の言葉の意味は「地位、身分、立場、状況」の意味があります。

まずは下の木工家具をご覧ください。

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これは家具に絵の具などで絵を描いたものではありません。

実はこれはキャンバスとなる木をくり抜いて、その上にくり抜いた形と同じ形の別の木を、パズルのようにぴったりとはめ込んでいる「木象嵌」という手法で作られた装飾を施した木工家具なのです。

この家具は、スウェーデンの銀行、スベンスカ・ハンデルスバンケンの、特別なクライアントを招くゲストルームに置くために、1960年、カールマルムステンによってデザインされ、納められたコレクションボード(コレクション棚)のレプリカです。

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スベンスカ・ハンデルスバンケンは1871年創業の、北欧を代表する老舗の銀行であり、その特別なクライアントを通すための部屋はまさに「ステータス」を感じさせる設え(しつらえ)だったでしょう。

そして、この家具はそのような雰囲気の中でも、存在感がありながら周りと調和する独特の「柔和な印象」が、逆にその部屋のステータスを上げるものとして大切にされてきました。

このコレクションボードは、工場などで生産されたことがなく、カールマルムステンが創立した手工芸学校「カペラゴーデン」の先生、学生、卒業生のみがその製作を許されているものです。

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くしくも私がこの学校に留学・卒業したことから、5年前に同校に特別な許可をもらって製作しました。

恐らく日本にはこの私が作ったものだけがあると思います。

黄色っぽい、白っぽい、あるいはピンク掛かった色の、同じ種類もしくは別の種類の木材で、くり抜いた基盤となる木に埋め込んでいく木象嵌。

たったこれだけの「絵」でも一つ一つ木を選び、色選び、くり抜き、はめ込むという作業を繰り返しますので、気の遠くなるような時間と労力がか掛かります。

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そして、それを使って家具の材を作り、今度は家具の本体を作り上げる。

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一つ一つがすべて手作業、手作りの工芸品です。

この木工家具を作るのに、どれほどの技術が必要なのか、そして時間、労力、惜しまない手間の数々。

恐らく、この銀行のクライアントになる方々には、こういったことを「見抜く力」があり、だからこそ銀行もそのような方々に向けて、敢えてこの家具を発注したのだろうと思います。

その「見抜く力」こそが、真の「ステータス」ではないでしょうか?

 

「木象嵌」(もくぞうがん)という工芸品について

ここでは改めて「木象嵌」という特殊な技法を使った木工芸品のご紹介をします。

まずは木象嵌というものが何なのかという説明をさせて頂きます。

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象嵌(ぞうがん)というのは元々装飾工芸技法の一つのことです。

象嵌には、形を作ってはめ込むという意味があり、それに、「木」という文字を付けて、「木象嵌」ということになれば、木を使って形をはめ込む木工芸品ということになります。

ベースとなる板の上に、ベースとなる絵柄を描き、それを1つずつ切り抜きます。

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その切り抜いた形に沿って、全く別の木をぴったりになるように嵌め込んでいく、という作業を繰り返して、1つの芸術作品が仕上がります。

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つまり、全ては色々な種類の「木」という材料で出来上がっており、その色の違いや木目だけで、職人が時間を掛けてひとつの作品を作り上げていくのです。

木象嵌はご存知のようにすべての絵柄が一つ一つの技で構成されています。

つまり模様の濃淡はすべて利用する木の色によって使い分けていきます。

下絵のイメージをそのままに伝えられるように、同じ種類の木でも色によって使う場所、デザインを使い分けています。

多くの技の種類や色味の中から下絵にあった木を選んでいくために、工房ではかなりの数の木のストックを常時持つことになります。

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小さな材料も、小さな小さなパーツを作るのには必要ですから、ムダも少なくて済むのが木象嵌の環境への優しさとも言えます。

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こうして、下絵づくりに始まって、材料の配色、選び出し、実際の象嵌作業、基盤となる板への圧着、塗装、フレーム作りまで、
何日もかかっていくつもの工程を経ることで、一つの作品がようやく世に出ていくのです。

自然の木の色、木目だけを使っていますから、下記写真のように、同じ絵柄が世の中に二つとない、「世界に一つだけの製品」が完成するのです。

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下記の作品も、「すべての図柄が木に木をはめ込んだだけで出来ている」と言うと、ご覧になった方は大抵驚かれます。

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木象嵌を知らなかった、初めて見る、と言った方は衝撃すら受けられるようです。

しかしながら、本物を見抜く力がある方には、すぐにその「価値」が伝わりますので、木象嵌が「ステータス」を感じさせるものである、「ステータス」のある人にこそ理解してもらえる、そういったものなのだろうと思っています。

では実際に木象嵌によってどのような作品が出来上がるのかをを見ていきましょう。

製品の一つ一つが、ベースとなる木に絵を描き、それを切り抜いて別の木を嵌め込んでいくという作業の繰り返しによって造られて行きます。

どのような大きさのキャンパスを使うか、もしくはどのような絵柄を書くか、もしくは完成品をどのような用途にするか、どのような最終加工をするかによって大きくサイズもコストも利用目的も異なってきます。

図柄はシンプルにすればシンプルにするほど職人の作業時間の負荷の軽減が図れます。

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逆に複雑に、凝ったものにすると、作業時間は長くなり、コストも上がりますが存在感も増すことは間違いありません。

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大きなキャンパス、例えば2メートルを超えるようなものであれば、もちろんそれに対応した原木となる木が用意できるかどうか、存在するかどうかという条件が加わります。

こちらの写真はピアノ教室様の教室内に飾られた木象嵌の作品ですが、壁に縦2メートルもの木象嵌の工芸品を掛けて頂いております。

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壁に掛けるだけで高級感が一層引き立ちますし、大切なお客様がお越しになられた際の会話の糸口としても、工芸品としての木象嵌はきっとあなたのステータスを高めてくれることでしょう。

「見た人が、その美しさに嫉妬するように・・・」

そんな作品作りは、作品自体のクォリティを上げる気がします。

「すごい!」「これは何?」「自分も欲しい!」

木象嵌をご覧いただいて、こんな感想をもらった時には、心の中では、正直「よし!」とガッツポーズです・・・。

大きな迫力のある木象嵌や象嵌を使った木工家具は、特に高級感を出したいホテルのロビーや、ギャラリーの廊下、スイートルームの価値の向上においても、芸術品としての側面からより付加価値を付けてくれるのではないかと思います。

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同じような理由で、マンションのモデルルームに飾るという用途にもいいかもしれません。

「高級感」「ステータス」という意味において、こう言った、よりグレードの高いマンションを購入される方は、先の銀行のクライアントではありませんが、木象嵌の価値についてより理解して頂ける方が多いのではないかと思います。

「良いもの」を良いものとして理解してもらえる、価値を認めてもらえる。

そういった真の「ステータス」のある人、ある場所にこそふさわしいものがまだまだ世の中にはあるのではないでしょうか。

もっと多くの方に「木象嵌」を知ってもらいたいと切に願う毎日です。

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投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

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