人の目と言うのは不思議なものだな、と思う瞬間があります。
はっきりと見ているようで、見ていたのはその物の輪郭であったり、色であったり、質感であったり。

今は携帯電話に性能の良いカメラがついているので、気になったものを瞬間的に撮影して、「画(え)」として保管することができます。でも、おもしろいことに、記憶として残った残像と、このメディアに記録された「画像」とでは、自分の頭の中でまったく別のものとして感じているように思います。

突然こんなことを考えたのは、毎日触れている木材をしげしげと眺めていたからなのです。
同じ木でも、色や、木目が違うのは当たり前ですが、これを象嵌に、家具に、と考え始めると、見えているのは「木」のはずなのですが、その一方で見えていない「何か」を感じ取って、そこからそれぞれに使っていく用途が自然と決まっていく、そんな不思議な感覚は作家にとってなくてはならない要素のように思います。

と言っても、これは特別なものでなく、誰もが持っている感覚の一つです。
そしてこの感覚が共有されるからこそ、作った家具や象嵌を受け入れてもらえるのだと思っています。

IMG_0497写真は象嵌に使われた後に残る突板の様子です。
夢中になっていると、あまり気にならないのですが、机の上にちらばったこれらを集めていると、なんだかこれでもう一つ作品が生まれるんじゃないのかな、と言う気持ちになって苦笑してしまいます。

ものによっては機関銃で撃たれた後のようになっていますが、これだけ細かく使ってやれば、「木」も満足かなーと思ったりします。
それぞれに生きた証を、違うカタチにして残して行く作業。木工家としてはそれが最大のテーマになるべきことのように思います。

そしてもちろんこれも、それぞれに使われる用途によって、全く違ったものになっていくはずです。同じように見えて違うものになる。それを見て頂く方にどれくらいお伝えできるか・・・。「見えないもの」への挑戦でもあります。

今、いくつかのご注文を頂いているのですが、偶然にも「家族」がテーマのご注文が重なっています。
「喜寿」のお祝いに家族で贈るものをご依頼いただいたり、「いつも家族の中心にあって愛着を感じるような作品に」とご希望をお寄せいただいたり。中には「愛犬をさりげなく象嵌の模様の中にいれたい」という方もいて、実際に打ち合わせでそのワンちゃんにも会うことになったり。おもしろいなと思うと同時に、「やりがい」を全身で感じています。

私が作る家具や象嵌は「見えるもの」であり、そしてその作品からそれぞれの「家族への想い」という「見えないけれど感じるもの」があればこそ、その両方から作品がさらに深まっていくのだと思います。

大切な仕事をさせて頂いていると思います。
その「想い」を共有させていただくこと、それが使命なのだなと作品作りを通して考えています。

さてIMG_0498 (1)、最後に蛇足ながら、今日の仕事のご報告です。花の「花弁」を作っています。一つ一つ、デザインカッターで切り抜いているのですが、とても細かい作業で、思わず叫びだしてしまいそうです・・。嫌いじゃないんですが(笑)
工房に偶然いらした方は、どうか怪しまないでくださいー。

投稿者プロフィール

Akio Shimada
Akio Shimada
1971年生まれ。北海道苫小牧市出身。日本各地で木工修行の後、スウェーデンで北欧の木工技術を学び、2007年日本人として初めて「スウェーデン家具マイスター」の称号を得ました。高い技術を誇る木象嵌と家具の製作をしています。

お問い合わせ→こちら

関連記事

  1. ポストカード|花、実、葉  |木象嵌で作ったオリジナル

    2016.06.23

    ポストカード|花、実、葉 |木象嵌で作ったオリジナル

    「ポストカードの在庫、ほとんど無いですよー」そう連絡をくださったのは、札幌の大通りにあるお店…

    ポストカード|花、実、葉 |木象嵌で作ったオリジナル
  2. 「木の箱」にこめた想い -プロポーズを巡る箱物語-

    2016.10.4

    「木の箱」にこめた想い -プロポーズを巡る箱物語-

    「プロポーズに使って頂きましたよ!!」「え?!」そして送っていただいた一枚の写真。…

    「木の箱」にこめた想い -プロポーズを巡る箱物語-
  3. マイスターがつくる象嵌家具の製作、公開します ‐その1‐

    2016.05.25

    マイスターがつくる象嵌家具の製作、公開します ‐その1‐

    先日、札幌市内にお住いのH様のお宅に伺い、象嵌家具製作の3度目の打ち合わせをして来ました。昨…

    マイスターがつくる象嵌家具の製作、公開します ‐その1‐
  4. 第66回日本伝統工芸展に入選して思う事

    2019.11.18

    第66回日本伝統工芸展に入選して思う事

    この夏、初めて出品したこの木象嵌の箱が「第66回日本伝統工芸展」に入選することができました。そも…

    第66回日本伝統工芸展に入選して思う事
  5. 恒例の雪下ろし、やりました!

    2015.01.17

    恒例の雪下ろし、やりました!

    今日は恒例の、「工房雪下ろし」を行いました。下から見ても、結構な雪の量です。スキーウェアに着…

    恒例の雪下ろし、やりました!
  6. 作品が旅立ちました

    2015.10.21

    作品が旅立ちました

    先日、フラノ寶亭留の展示会をご覧になった方が木象嵌をご注文下さいました。行先は香川県です。…

    作品が旅立ちました
  7. 新年ご挨拶

    2015.01.13

    新年ご挨拶

    遅ればせながら、本年もよろしくお願い申し上げます。写真の通り、今年も風雪の強い日が多…

    新年ご挨拶
  8. 2019年 今年も象嵌yearと呼べるように・・・

    2019.01.28

    2019年 今年も象嵌yearと呼べるように・・・

    2019年も明けてもう1か月が過ぎようとしていますが・・・改めまして、本年もよろしくお願い申し上…

    2019年 今年も象嵌yearと呼べるように・・・
  9. オリジナルプレゼント|マイタンブラーを作る!

    2016.07.25

    オリジナルプレゼント|マイタンブラーを作る!

    お客様へのプレゼントに、こんなオリジナルの「マイタンブラー」をオーダーしてみました。…

    オリジナルプレゼント|マイタンブラーを作る!
PAGE TOP